火魅子伝〜神器に選ばれし者〜

第2話


作・ビック様







 いつも静かな森が今日はどこか違う。

 その違和感に最初に気づいたのは獣達だった。

 異変を感じた獣達はすぐさま我先にと逃げ出していた。

 カァァァァァア!!

 突然、強烈な光を放つ球体が現れた。

 光の球体は意思を持っているかのように移動している。

 森の中にある大きな岩の上まで移動すると静かにその動きを止めた。

 ズズッ

 光の中から腕が生えてきた。

 ズズズゥ

 腕の次は足が生え、やがて重力に惹かれたようにして一人の男がドサッという音と共に岩の上に落下した。

 「ぐわっ!」

 男の名前は九峪 雅比古といった。

 「痛ってぇ〜」

 九峪は頭を抱えてうずくまる。

 どうやら落下した時に後頭部を岩に打ち付けてしまったようだ。

 「くそ〜〜、何なんだよいったい?」

 九峪は仰向けになって左手で太陽の光をさえぎる。

 「どこだよ…ここは……」

 九峪はきょろきょろと辺りを見渡す。

 九峪の心は不思議と落ち着いていた。

 (俺はいったいどうしたんだ?)

 (……感覚はある。どうやら死んじゃいないみたいだ…)

 (ばあさんはどうなったんだ?)

 (まあばあさんのことだから大丈夫だとは思うけど)

 (なんにせよ、今のこの状況で最大の疑問は……)

 「これがなんなのかってことだよなぁ」

 九峪は力なく呟いた。

 光の球体はいまだ九峪の頭上で輝いていた。

 「ん?」

 球体に変化が起きた。

 まるで破裂寸前の風船のように膨らみだした。

 パァァァァン

 一瞬の間を置き光の球体は弾けとんだ。

 「なんだぁ!?」

 九峪は咄嗟に両腕をクロスさせ顔をガードする。

 「とりゃーー!!」

 ドスッ!!

 「ぐわっ!!」

 見ると九峪の腹部に誰かの足がめり込んでいる。

 どうやら何者かに思いっきり踏まれたらしい。  

 九峪が目を向けるとそこには12〜3歳くらいの少女がいた。

 誰が見ても可愛いと思えるような顔立ちで、服は蒼い法衣のような物を着ている。

 少女は悪戯が成功した時の子供のように(まあ子供だが…)笑っている。

 「えへへ〜♪ 初めまして! ボクはキョウ! 耶麻台国の四大神器の一つ『天魔境』の精だよ♪」

 「………あのなぁ」

 「あれ? どうしたの?」

 「いつまで俺を踏んでんだよ!」

 「えっ? あはは〜〜♪ ゴメンゴメン♪」

 キョウと名乗った少女は素直に九峪から降りる。

 踏まれたのはムカつくがとりあえず素直に謝ったのでよしとした。

 九峪は立って改めてキョウを見た。

 キョウは何かを期待しているのか眼を輝かせて九峪を見ている。

 「……とりあえず聞きたいことがあるんだが」

 「ほぇ? なになに!? 何でも聞いてよ♪」

 「まずは、ここは何処だ?」

 「ここは『九洲』。 まあ君から見たら異世界だよ♪ ただ君の世界の『三世紀頃の九州』と結構似てるけどね♪」

 「異世界の『九洲』ねぇ…」

 誰もが信られないような言葉だったが、九峪はその言葉を信じた。

 光の球体が現れたりその中から少女がでてくるのだ、九峪はもう異世界だろうがなんだろうが信じる気になっていた。

 「じゃあ次の質問、俺をここに連れてきたのはお前か?」

 「そうだよ? よくわかったねぇ♪ 君を召喚したのはボクだよ♪」

 「何故?」

 「もちろん耶麻台国を復興して貰うためだよ!!」

 「はぁ!?」

 (耶麻台国を……復興?)

 九峪が驚きと呆れを含んだ声を上げる。

 (……………えっ?)

 さすがの九峪も思考が一瞬停止した。

 「えっと……キョウ? でいいんだよな」

 「うん♪」

 「もうちょっと詳しく言ってくれ、いきなり耶麻台国の復興とか言われてもなぁ…」

 「あ、そうだね。 えっと………」

 キョウの顔が引き締まる。

 キョウは自分の知っている事を出来るだけ詳しく話した。


 耶麻台国が狗根国に滅ぼされてしまった事。

 耶麻台国を復興するには女王『火魅子』が必要な事。

 その為には『火魅子の素質を持つ女性』を探さなければならないという事。


 「まあ……大体の事は分かったけど……」

 「引き受けてくれるよね♪」

 「もちろん断る!」

 九峪は即答した。

 異世界にいきなりつれてきて一国を救ってくれなんて、よっぽどの変わり者でない限り断るだろう。

 (というか何故俺がそんなことを承諾すると?)

 「ええぇぇぇぇ!?」

 「えぇ!? じゃない! 大体なんで俺なんだよ?」

 「だって君は『蒼竜玉』(そうりゅうぎょく)に選ばれし者だから……ボクの頼みも聞いてくれるかと……」

 キョウは涙目になりながら九峪に詰め寄る。

 「蒼竜玉って……なんだ?」

 「あれれ? 気づいてなかったの?」

 「だから何なんだよ? 俺はそんな物見たことも聞いたこともないぞ」

 「蒼竜玉ってのはボクと同じ耶麻台国の神器の一つで、今君の体の中にある物のことさ」

 「俺の体の中に?」

 九峪は苦笑した。

 「そんなことあるわけ「正確には同化しているんだよ」だろって………同化?」

 「うん。君、昔からなんらかの『力』を使えるでしょ?」

 「っっっっ!!」

 キョウが得意げに話していたが、九峪にとってそれは驚愕の内容だった。


 九峪は小さい頃から不思議な『力』を持っていた。

 日魅子にも数えるほどしか見せたことのない『力』が……

 子供の頃、近所の友達に力を見せて自慢したことがある。

 その時は何事もなく終わったが、しばらくすると近所の友達やその親は九峪を『化物』呼ばわりして近づかなくなった。

 その時の事がきっかけで九峪は人前で「力」を使うことは極力避けるようになった。

 一時は自分の力を恐れ、部屋に閉じこもっていたこともあるが、日魅子のおかげで自分の力を受け入れられるようになった。

 自分を苦しめ、今では自分の一部といってもいい『力』……

 目の前にいるキョウという少女は、何故自分がこんな『力』を持っているのか知っているらしい。

 長年疑問に思っていた答えが分かるかもしれない。

 頼みを聞くつもりはないが、とりあえず話だけでも聞くことにした。

 
 「なんで知ってるのかって顔してるね♪」

 「……まあな」

 「それはボクも蒼竜玉と同じ神器だからさ♪ 同じ神器同士だからね♪ それくらいすぐに分かるんだよ」

 「……」

 「でね♪ 蒼竜玉の役目は女王火魅子を守る者、『選ばれし者』を探して力を与えることなんだ」

 「選ばれし者…ねぇ」

 (その蒼竜玉に俺は選ばれたってことか……)

 「それにしても吃驚したよぉ。
  なんせ起きた時には火魅子の素質を持った人はおばちゃんになってるし、
  そのすぐ傍には選ばれし者がいるんだからねぇ」

 「……ん? 火魅子の素質? おばちゃん?」

 「そだよ? 本当は火魅子の素質を持った彼女を連れて帰るつもりだったんだよ」

 「って日魅子のばあさんのことだよなぁ?」

 「うん。 ボクと蒼竜玉とまだ赤ん坊だった彼女は元々こっちの世界にいたんだよ。
  耶麻台国の人達が狗根国から逃げる最中になんらかの原因で君のいた世界に飛ばされてね。
  なんとか元の世界に帰ろうと力を溜めてたんだけど70年も掛かっちゃって…いやぁ参った参った♪」

 「参った♪…じゃねぇ!!
  つまり何か!? 元の世界に戻る為の力は溜まったのはいいが日魅子のばあさんが年取りすぎてて、
  ちょうど蒼竜玉に選ばれた俺が近くにいたから替わりに俺をこの世界に連れてきたと!?」
 
 「おおっ♪ 君って案外鋭いね♪ 大正解だよ♪」

 「ふざけんなぁーーーー!!」

 バチバチ!!

 九峪の右手から蒼い雷が発生した。

 この『蒼い雷』が九峪が子供の頃からもっている『力』の正体だった。

 九峪はそのまま雷をまとった右手でキョウの頭を掴んだ。

 「のぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 バチバチバチバチ!!

 九峪の電撃を受けキョウは叫び声をあげる。

 ボンッ!!

 突然キョウが煙と共に消えた。

 「………一応手加減したんだが……どうなってんだ?」

 あまりの出来事に我を忘れてキョウに電撃くらわせてしまったが、まさか消えるとは思わなかった。

 「うぅ…酷いよ君ぃ、おかげで元の姿に戻っちゃったじゃないかぁ」

 「ん? どこだ」

 「ここだよ。 君の足元!」

 九峪が声に反応して足元に目を向けるとそこには小さな鏡があった。

 よく見るとそれはこの世界に来る前に光を発していたあの鏡だった。

 「元の姿ってことは……これがお前の本当の姿ってことか?
  神器の精とかいまいち信じられなかったけど……なるほどねぇ」

 ボンッ

 キョウはまた人の姿になった。

 「うん♪ でもさっきの電撃は効いたよ〜。 あれが君の力だね? 凄いよ♪」

 「そうか? 俺は物心ついた頃から使えたからよくわからんが…」

 怒りの余りキョウに電撃を喰らわせた九峪だが、さっきの一撃でどうやらすっきりしたようだ。

 「あはは〜〜♪ 痛かったけどこれで希望が出てきたよ♪ 蒼竜玉が与える力ってその人によって様々だからね。
  その力なら耶麻台国復興の為に役立ちそうだし…」

 「ってまだ諦めてなかったのか? その話は断るっていっただろ?」

 九峪は呆れた顔をする。

 「うっ、……君……元の世界に戻りたくない?」

 「えっ?」

 「君が元の世界に戻るには耶麻台国を復興させるしかないんだよ?」

 「どういうことだ?」

 「ボクの力を使って君を元の世界に連れて行くにしても力を溜めるのに70年掛かるしね。
  そうすると他に方法は一つ。
  耶麻台国を復興して女王『火魅子』の力で『時の御柱』を動かすしかないんだよ」

 「……よくわからん単語があったが、ようするに耶麻台国を復興しないと元の世界には戻れないぞ…と?」

 「簡単に言うとそうだね♪」

 「…………」

 「……………」

 「それって脅迫とも言わないか?」

 「君がそう思うならそうかもね♪」

 (こいつ……可愛い顔して……いや、とぼけた顔してなかなかやるな…)

 普通なら怒る所だが九峪はむしろキョウのことを見直していた。

 「でも断るぞ?」

 「えぇえぇぇぇぇぇ!! なんで!?」

 「耶麻台国復興ってことは狗根国って奴等と戦争するってことだろ?
  俺は人殺ししてまで元の世界に帰りたいとも思わないしな」

 「そんなぁ〜〜、じゃあボクはこれからどうしたらいいのさ〜〜」

 キョウは座り込んで泣き出してしまった。

 「だぁ〜〜!! こら、泣くな!!」

 「だって……うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 キョウの目からまるで滝のように涙が流れ出ている。

 九峪はかなり困っていた。

 戦争なんて絶対ゴメンだが子供とはいえ女に泣かれるのは嫌だった。

 女の涙は九峪の苦手なものベスト3に入るのだ。

 ちなみに1位は日魅子のお仕置きだったりする。

 「わ、わかったよ、ちょっとだけなら手伝ってやるから…」

 「ヒックッ、ヒック」

 「旅でもしながら火魅子の素質を持つ女性探しくらいなら手伝ってやるよ。
  それなら危険も少なそうだし、俺も此処で暮らすからには、この世界のこといろいろ知っていかなきゃいけないからちょうどいいし、
  耶麻台国復興の話はその火魅子の素質を持つ人にでも頼めばいいだろ?」

 「…………でもぉ」

 「それで納得してくれ。 これが俺に出来る精一杯のことなんだよ」

 「…………とりあえずそれでガマンする」

 キョウはようやく泣き止んだ。

 「はぁ」

 (とりあえずってことはまだ諦めてないって事だよなぁ…)

 まだキョウは納得してしてないようだが、泣き止んだので九峪はホッとした。

 「そういえば自己紹介してなかったな」

 九峪はキョウに向かって手を伸ばす。

 「え?」

 キョウは咄嗟に差し出された手を握った。

 「俺の名前は九峪、九峪 雅比古だ」




 あとがき

 やっちゃいました〜〜! キョウ擬人化!!
 いや〜〜更新遅くて申し訳ないです。 私生活で色々とありましてこれから更新さらに遅くなるかもしれないです。
 それでも1ヶ月に最低一本は書くつもりですが……どうなることやら(^^;
 でも続きは絶対に書くのでこれからもよろしくお願いします。


 キョウが女の子に・・・声は南 央美さんのままで決定ですね(笑)原画集では声が南さんだと分かってればキョウもっと女の子っぽくしたってことでしたし♪

 復興はことわられたキョウちゃん、これからも可愛い顔して色々画策しそうで楽しみです。な〜んか九峪、まだまだ秘密がありそうですしね。


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