PMF2012〜その1
Sプログラムとホストシティ・オケ


2012年7月8日 9:40 札幌コンサートホール エントランス

「申し込みされてましたか?」
「いえ、当日枠はまだありますか?」
「はい、最後のお一人です!」

なんと、危なかったではないか。
次のルイジのゲネプロはもっと早く来なければならないな・・・。


2012年7月8日 10:00〜 札幌コンサートホール 大ホール
     PMFO Sプログラム オープン・リハーサル イェンセン指揮

アカデミーたちは早い時間からステージ上で熱心におさらいをしていた。
若きマエストロはほぼ時間通りに登場。

まずは「キャンディード」序曲。
音量は十分だが、ちょっと硬いかな?

続いては「英雄」、ここから意外な展開となった。
今までのパターンであれば、ゲネプロらしく?
ざっと通して、気になるところを2、3か所さらって、おしまいなのだが、
この日は止める、止める!
しかも無難に行くと思えるところは、はしょって音楽が進んでいく。
実際アンサンブル的に結構危ういシーンが頻発する。
そうしたポイントを指揮者だけではなく、各パートのトップのPMFヨーロッパが口を出していく。
ベートーヴェンって難しいのね・・・。
スケルツォの頭で女傑!モネ(失礼)がトチッて止まったのには驚いた。

休憩後モーツァルトのピアノ協奏曲。
これまた止めまくって、最終確認のしまくり。
こちらはソリストも椅子を立ってオケの中に入って口を出す。
こんないそがしいゲネプロは初体験。
本番大丈夫かしら・・・。

終了はちょっと押して12:12。
練習後トランペットが景気良く「英雄」のモチーフをアピール。
若いながら昔風の?アプローチか・・・。


2011年7月8日 13:00〜 札幌コンサートホール 大ホール
     PMFO Sプログラム イェンセン指揮

「Sプログラム」ってなんだろう?
「ショート」でもなければ、「スペシャル」でもない。
まさか「スターティング」とか・・・。
指揮者は1972年生まれのノルウェーの出身。

「キャンディード」序曲はPMF創設者の代表作の一つとして、
この場で最も演奏されてきた曲になるかもしれない。
午前中同様、力強く、華やかさに欠けないがやや重い。
もうちょっと音楽が前のめりでも良かった様に思われた。

続いてはモーツァルトのピアノ協奏曲。
第17番というのは聴いてた様でそうでない1曲。
第3楽章のオペラ風の主題によるロンドが楽しい。
ピアノはアンドレア・バケッティ。
幼少より数々の巨匠の薫陶を受けたということだが、
自分にはどうも、平板でつまらない。
実に音はクリアで、一音一音しっかりとしたタッチ。
その点では実に素晴らしいが、それが全曲に渡って均一に続けられる。
もう少し羽目をはずすような飛躍があっても良いのではないか?
薫陶を受けた神童がそのまんま進化することなく成人してしまったような感じである。
バッハのゴルドベルクやフランス組曲を録音しているのだから、
タダものではないはずなのだが、この日の演奏は自分には不満がつきまとった。
オケでは木管楽器、特にオーボエ・ソロが素晴らしかったが、
客が少なく、上席のCBブロックで聴いたリハーサルの時の方が上だったか。
アンコールにスカルラッティのソナタイ長調。
残念ながら、協奏曲よりさらにつまらない音楽。

休憩たっぷり20分の後は「英雄」。
PMFではその昔、チケットを購入しながら、それを忘れて仕事をしていたという記憶がある。
力強い響きで始まるアレグロ・コン・ブリオ。
テンポは速めだが、解釈にしては小刻みに動いて不安定。
この点はゲネ・プロでも気になったのだが、
本番横から見ていて気になったのは、3拍子の振り方。
この人、一つ振りと三つ振りがやたら入れ替わるが、
その二つの振り方の拍の抑え方がどことなく違うのだ。
テンポの微妙な揺れはここに由来するのではないか?
個人的には感心しない。

演奏のスタイルそのものはユニークで大変興味深い。
第1楽章提示部はリピートを敢行しながら、
コーダでのトランペットは気持ちよく終始テーマをなぞっていた。
基調として、倍管で大型編成の近代風のオケらしく、強奏では金管や倍管の木管を朗々と鳴らし、
抒情的なシーンでは弦にしっとりとひかせる一方で、
早めのきびきびとしたテンポで、ティンパニには古楽器風の固い響きを要求していた。
細部のダイナミクスやバランスへのこだわりはなかなかのもので、
第2楽章やフィナーレの木管のアンサンブルでは、
テーマのバックに埋もれがちな音が比較的よく聴こえていたように思う。
そうした部分、面白いといえば面白いのだが、
コクにまずしいと言ったら、耳が古いと言われるだろうか・・・。

細かい部分で不安をちらつかせたゲネ・プロに比べれば、
本番では勢いの良い音楽で大きなミスは見られなかった。
ただスケルツォ冒頭でモネがゲネプロと同様のミスを犯していたのは意外。
指揮者と生理的に合わなかったのかしら?

豪快な響きでコーダの最後の音が消えれば盛大な拍手が沸き起こった。
しかしどうだろう?
1階席とCBブロック以外は半分も席が埋まらなかったのは寂しいオープニングである。

終演16:10


2012年7月12日 19:00〜 札幌コンサートホール 大ホール
     PMFホストシティ・オーケストラ演奏会 ルイジ指揮札幌交響楽団

今回のPMF最大の期待がかかるコンサート、というのは自分だけなのかしら?
あまりにもさびしい入りのKitara大ホールである。
プログラムは、けして大オーケストラではない札響のためにチョイスしたかの選曲。
しかし、トップは大平さんではない・・・。

最初はウェーバーの「オベロン」序曲。
実はこの曲が今日最大の不安と期待。
個別攻撃はよくないが、ホルンが結構重要なわけで・・・。
しかし、今の札響は昔の札響とは違う。
最初の一音がやわらかく決まった。
これがこの曲の演奏の成否の決めるといったら大げさだが、大変美しい演奏。
弦楽器はいつも以上の(失礼!)アンサンブルの精度で豊かな響き。
トスカニーニのような切れのある輝かしさはないが、まったりとした味わい?というべきか・

モーツァルトのフルート協奏曲の第1番。
フルートがシュルツが素晴らしい。
音は骨太ではないが見事なテクニックで輝かしい響き。
その一方で表現は控えめで実に上品。
あえて文句を言うなら、モーツァルトをこんなに隙なく吹いちゃっていいのかしら?ということか。
しかしさらに驚嘆したのは札響のパフォーマンス。
ルイジはここでただの伴奏ですまないほど細かく、表情豊かな音楽を持ちこんだ。
第2楽章あたりは意味深長すぎるほどの濃密さである。
札響はそれに実に細やかに対応したと思う。

後半はブラームスの交響曲第4番。
第1楽章はふわっとした感覚でスタート。
以後じっくりとしたテンポで整然と美しい音楽が進む。
時折はミスがあるが、全体から見れば軽微なキズ。
終盤、最大限ではないが熱のこもったクライマックス。
そう、ブラームスはロマン派ではなく、新古典なのだった。
第2楽章も、手堅いテンポ。
音楽の厚さはより増していく。
第3楽章はさすがにわずかなテンポアップ。
それでもある意味楷書体のブラームス。
フィナーレも慎重なテンポ運びで始まる。
ここでは中盤のフルート・ソロが見事。続くコラール風の部分も美しい。
コーダの追い込みではテンポを上げてくるかなと思ったが、
最後まで堂々たる横綱相撲的なテンポで力強いクライマックスを聴かせた。

総じてルイジの緻密な指揮に札響が過ぎるほど慎重に、かつ精度高く反応できたことで、
大変聴きごたえのある演奏会になったと思う。
とは言え客席は半分埋まったのだろうか。
あの熱気あふれる札響定期会員はこの日どこにいたのかしら?

終演20:50


PMF2012Topへもどる