PMF以来のひさびさの生。
整理券でオッコ・カム、しかもオールシベリウスときては、
我がオヤジが黙ってはいない。
かくて久々に我が息子受難の夜となった。
およそ20年ぶりの訪問?である小樽市民会館。
全然昔と変わってないその在りように驚き。
特に開演前のブザーでそれを痛感。(-_-;)
オッコ・カムといえば、70年代にカラヤン・コンクールで優勝?して、
ベルリン・フィルを振って、レコーディングしたという印象が強い。
正直言ってあまりそれ以外には失礼ながらデータなしといったところである。
前半は「フィンランディア」、「アンダンテ・フェスティーボ」、組曲「カレリア」と退場なしで演奏。
演奏は全体的に、イン・テンポが基調で、
(シベリウスの曲のスコアはもっていないので断定は避けるが)
ダイナミクスの幅が抑えられ、情緒的な押し出しも控えめなで、
「フィンランディア」の冒頭などあまりにもあっさりとした音楽で肩透かしを食らった感じさえする。
弦楽器中心の「アンダンテ・・・」はなかなかクリスタルっぽい響きがよかったが、
管打パートが今ひとつでオケ全体の感興は最後の「行進曲風に」でやっと高まってきたかなというところ。
後半は交響曲第2番、BPOとのデビュー・レコーディングの曲である。
これも派手さを控えた「純音楽的な」演奏で、
時折そのあっさりとした運びに面白みが不足するのを感じたが
引き続き弦楽器が健闘して聴き応えのある演奏だったと思う。
アンコールに予想通り?「悲しきワルツ」。
ここでも速めで重すぎず、チャーミングなテンポ運びで曲が進められた。
改めて気づいたのだが、カムにとってはシベリウスは同郷、
しかもコンテンポラリーといっても遠くない世代になるわけで、
一般的?なイメージの厚めの響きで、ロマンティックな音楽ではなく、
虚飾を廃したかのような姿勢は考えようによってはむしろ当然の帰結かもしれない。
以下は札響についての感想、
ホーム・グラウンドであるKitaraに比べあまりにも状況が違って、
残響の少ないホールである点は割り引いてあげたいが、
シベリウスの音楽には不足気味の人数かと思われたが、
カムのスタイルにも適合して、立派な音楽を聴かせてくれた弦楽器に比べ、
派手にひっくり返るシーンはなかったが、おっかなびっくりのの金管、
オーボエだけが妙(「すばらしく」とはいえない)に突出した木管と、
管楽器の弱さがあまりにも気になった。
終演20:10。
昨年に続いてわが息子受難の?日がやってきた。
親子三代S席8千円。今年もベートーヴェン。
当日売りはA席200枚、開演時には9割以上の入り。
オケは左手にコントラバス6本が並ぶ両翼配置だ。
まずはオピッツのソロによる「皇帝」、
ETVでのベートーヴェンのレッスン番組の人である。
冒頭、左手がやや弱く、腰砕けかと心配したが、
やがてバランスも持ち直し立派なベートーヴェンだった。
全体として速めのイン・テンポで、
少しもってほしいところもさらっと過ぎていく。
そこがちょっと不満ではあるが、
明確な響きがその不満を解消させてくれる。
後半は「田園」。
指揮のシェーファーはベルリンで
アバドのアシスタントを務めていたとか、
「皇帝」同様どちらかというと速めのテンポで始まる。
一転第2楽章はゆったりと小川の情景を歌う。
ダイナミクスや、テンポにいろいろと工夫をこらして、
はっとさせてくれる場面を作るのだけれど、
(このあたりはアバドの「アシ」らしい?)
さすがに36歳の若きマエストロの他流試合、
その表現もなかなか消化されきれていない。
とはいえ活きのいいベートーヴェンで、
第2楽章冒頭の3連符の扱いの美しさや、
フィナーレの第2主題の感謝の表現など、
目先の表現だけではないない充実した音楽。
聴衆からも満足の「ブラヴォー」も出た。
アンコールになんと「コリオラン」序曲。
ピッコロがあるので「エグモント」かなと思ったがはずれた。
これがおそらくトスカニーニ、カラヤンを上回るであろう?快速テンポで、
もう少しであのシェルヘンのルガーノライブ(この曲はなかったけれど)の域に届きそうな小爆演?であった。
最後に今回の札響について、
弦楽器は両翼配置ということもありトゥッティでは音の整理が行き届かなかったけれど、
音量的には十分な響きを聴かせてくれたし、作曲家が両翼配置を念頭に曲を書いたことを、
指揮者と共に明確に伝えてくれた。
管楽器については、ホルンは正直に言えば「皇帝」では評価の対象外。
「田園」の後半でやっと安心させてくれたかなという感じ。
木管楽器は個々のパートとしてはいいのだけれど、
今日のような「古典中の古典」みたいな曲をやるときに、
総体として「札響カラー」みたいなものがあってほしいと思う。
80年代の札響にはそれがあったようにおぼろげに記憶するのだが・・・。
最後の最後に短評をふたつ。
祖父 「しっかりとしたピアノが聴けてよかった。もっと前で聴きたかった。」
孫 「おなかすいた!」
終演 16:10。
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1974年、ザンデルリンク指揮で聴いたオーケストラ。
6時半開場の時点でまだリハーサル中のようで、
聴き手はホワイエで待たされるが、クロークの混雑と、
ビールにサンドイッチと「定番メニュー」をいただくうちには、
大ホールも開放された。
最初はメンデルスゾーン、名曲中の名曲だが、
それ故にむしろ聴く機会は少ないように思う。
椅子の数から弦は6〜7割のプルト数で演奏。
チューニングのオーボエのよく通る”A”が期待を持たせる。
川久保賜紀は鮮やかなブルーの衣装で登場。
美しく、よく歌い、技巧的には全く破綻のないソロで、
最後列でも一つ一つの音が聴きとれるのだけれど、
それ以上のプラスアルファが感じられないのは残念。
伴奏はソロにあわせ、フィナーレの華やかさも控えめ、
インバルがダイナミクスに細かく気を使っていた。
20分の休憩でマーラー。 すべて埋まった椅子は
第1ヴァイオリン16、コントラバス8は「普通」の編成。
インバルはスコアをめくりながら、明確な指揮ぶり。
指揮どおりの明晰で整理された音楽が展開される。
第3楽章まではやや遅めのテンポで進められた。
全般として木管楽器の音色に魅力を感じた。
弦楽器はザンデルリンクのブラームスに聴かれた、
いわゆる重厚な「昔のドイツ風」の響きからは、
さすがに明るくなったように思われた。
問題は金管楽器。
おそらく「熟練したマーラーの聴き手」であれば、
最初のトランペット・ソロで「?」と思っただろう。
第1楽章などはホルンと共に技巧的に不安定な部分が散見された。
特にトランペットソロの、力のない響きはこの楽章の力感をかなりそいでいた。
葬送に立派なラッパはいらないというインバルの解釈かとも思ったのだが・・・。
第2、3楽章も大きな爆発よりも、インバルの音楽を整理する姿勢の方が勝っていた。
以上の経過から第4楽章がこの演奏の一番の聴き所となったのは、喜ぶべきか、悲しむべきか?
その4楽章とあわせて第3部となるフィナーレはそれまでと一転やや速めのテンポで演奏された。
その変化が終結の歓喜の爆発へつながるかと思いきや、
あくまでもクールな線で演奏は締めくくられた。
自分のこの曲へのイメージとして、整理された演奏という点では納得しながらも、
70分間、「来るぞ来るぞ」じらされたまま終わったというか、
「オーケストラを聴く醍醐味」を味わえなかった不満は最後まで残った。
思えば2001年からのコンビである、もうしばらく熟成するのを待たねばならないかもしれない。
なんと大曲の後にハンガリー舞曲第5番。30年前は第1番だった。
楽節ごとにかなり派手にテンポを変えて聴かせてくれた。
ハープも残っていたのだから、「マイスタージンガー」あたりをと思ったらバチ当たりか・・・。
終演 21:15。
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1935年生まれというから今年で70歳、わがオヤジよりも年上である。
ベーム、カラヤンをはじめ、 多くの20世紀の名指揮者たちの録音で、
その名唱に接してきた大テノール。
リートの分野でも、この人がギター伴奏で「水車屋」をやらなければ、
私のこのジャンルへの踏み込みは今ほどではなかったろう。
Kiatraへは3回目、いままでは大ホールで聴くことへの抵抗から、
まさしく「敬遠」してきた演奏家である。
しかし、今秋引退という情報を聴けば行かないわけにはいかない。
客席はやはりPMFとは違う客層で埋まった。
前半は「白鳥の歌」。
なんとKitaraで三大歌曲集を歌ったことになる。
座った席はほぼステージ真横の席、
字幕スーパーも機械のフレームが邪魔をしてわずかに欠ける。
そんな席で聴いた声は最初の2、3曲はやや明瞭さに欠けたが、
名曲「セレナード」あたりからは、昔と変わらぬ年齢を感じさせない声、
特に後半、ハイネの詩による後半は見事な歌に圧倒された。
最後の「影法師」ではぐっと身振りも大きく演じていた。
おそらく正面で聴いていたら身動きもできなかったのではなかろうか。
後半は名歌曲集と銘打って、シューベルトを9曲。
スタッフに申し出て、スーパーもステージも見やすい席に移動した。
最初の「春の想い」は、昔と変わることのない若々しい第一声、
こちらは涙もでそうな想いになる。
拍手なしで9曲はあっという間に過ぎ、最後は「ミューズの子」、
軽いながらもフェアウェルにふさわしい選曲で締める。
アンコールに「野ばら」、「鱒」、オオトリにはブラームス(!)の子守唄。
これほどに完璧な「鱒」は聴いたことがない。
伴奏のラディケはシュライヤーのスタイルに合わせた叙情的なピアノ。
個人的にはもう少し隈取があってもいいかなと思わせた。
終演 21:05。