2004年のコンサート


2004年12月26日   札幌コンサートホール
                    札響の第9 2日目
                                                             
  一昨年の演奏がNHKが録画、さらにCDになった尾高&札響の第9、
 人気公演の評判どおり、完売で当日売りはなし。
  すこし遅めにホワイエに入るとバッハの響きが聴こえてきた。
 奥へ進むとコンサート・ミストレスがシャコンヌを披露していた。
 聴衆に混じって団員の姿も多く、彼女への期待が感じられた。

  コンサートはKitara座付きの奏者によるオルガン演奏が前座。
 期待していたのだが、いきなりペダルと鍵盤がそろわないのはどうしたものか、
 旋律線も明確ではなくお世辞も出ない。
 締めくくりの長い和音で、いい響きだなと思ったくらい。

 15分の休憩をはさんで第9である。
 管楽器はダブらせず楽譜どおりの編成。
 声楽陣はPブロックに着席、
 独唱はその最前列に第1楽章から着席した。

 尾高の指揮は、曲へのバランス感、見通しがよく効いた感じで、
 第1楽章再現部や第2楽章の主部のクライマックスでのトゥッティが力に頼ることなく、
 各パートが見事なバランスを保って鳴り響いたのはさすがである。
 概してあまり策を弄さず、早めのテンポで音楽を引き締めていこうとする印象をもったが、
 札響がそれに100パーセントついていっていないのは残念。
 しだいにテンポは緩み、楽想の切り替えやクレシェンドで、
 指揮者がアクセルをかけるといった部分がしばしば見られた。
 そのせいか、音楽の流れや繋ぎのスムーズさが不足していたかもしれない。
 また、ベートーヴェンが細かく書いていったダイナミクスが生かされおらず、
  第3楽章までは曲の持っている起伏が出ていなかったのも減点。

  感心したのは第2楽章のトリオ、ここではやや高め?の木管の響きが功を奏して?? 
  輝かしい幸福な響きが聴かれた。
  残念だった?のは第3楽章、こちらが力尽いて、うとうととする部分が多くて印象が薄い。
  ホルンなどは演奏後立たされていたし、それほど破綻なく吹いていたように思う。
  ただ、アダージョとアンダンテのテンポの対比はもっと明確にしてほしかった。

  とはいえこの曲、フィナーレが勝負!とすればこの日の演奏は合格点を優に上回る。
  独唱ではバリトンのハニーサッカーが立派な声と豊かな身振りをつけて曲のメッセージをよく伝えていたが、
  体が揺れる分、声の向かう方向にムラがあったのは残念。
  合唱は年齢層が高い分声の響きそのものは立派、
  特にトロンボーンを伴った"Seid um schlungen"のあたりが素晴らしかった。
  しかし後半はフル・オーケストラの力強さには埋もれがち。
  高域はややつらいけれど、N響のバックで歌う未熟な学生の声よりは好みだから我慢しよう。

  なんだかんだと文句を言っても、なんといっても曲のすばらしさ、
  奏者たちの前半との気持ちの差か、オケの響きも力強く熱演に聴衆は大いに沸いた。

    終演16:50。

  いろいろと話題になる、楽譜の取り扱いで気づいた点は、
  第1楽章
     第81小節の木管は旧版通り(B)。
     第300小節のティンパニは新全集による(16分音符)。
  第2楽章
     リピートは全部実行。
     第276小節他のヴァイオリンは楽譜通りオクターブ上げない。
     第414小節のトロンボーンはフォルテシモではない(新全集版)
     第503小節他のヴァイオリンは旧版通り二分を切って弾かせる。
  第4楽章
     第115小節から第2ファゴットは新全集通り、コントラバスのオクターブ上。
     バリトンソロの第221小節”G-F”、続く第230小節からでは、
    ”freuden,freuden”とマーラー編曲(=トスカニーニの演奏)。
     第525小節からのホルンは旧版通り。

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2004年11月24日   札幌コンサートホール
                    チェコ・フィルハーモニー管弦楽団演奏会
                                                             
    悩みに悩んだ挙句?4時に退社。30年ぶりのチェコ・フィルである。
    当日売りは6時から発売らしい。Kitaraのチケットセンターによれば
   「余裕あり」と出ている。それでも15分前には列に並んでちょうど10番目。
    席は3階席の真中、ちょうどオケを俯瞰するような場所だ。
    ウィーン・フィルを聴いたのはこのさらに横の方だった。
    オケはコンマスを先頭に各パートごとに入場。
    実に規律正しいというかちょっと記憶にないパターン。

    コバケンは例のごとくちょこまかと登場。そしてちょこまかと棒を振る。
  その「振り過ぎ」がわずらわしい棒の下、チェコ・フィルの音は素晴らしかった。
    ハープ2本が奏でる「ヴィシェフラド」のテーマからやはり「本物」である。
  近年はBSの生中継で視聴する機会も多く、時折登場する他のオケでは
  面白くはあっても結局満足のいかなかった「わが祖国」。
   くだらない言い方だが、「本当の本物」が今ここに、という感じである。


   前半2曲で一番感じたのは美しいヴァイオリンの響き。
   オケのヴァイオリンの音できれいだなーと思ったのは
  メータ指揮で聴いたイスラエル・フィル以来である。
   「モルダウ」での狩のホルンの朗々たる響き、「シャルカ」での繊細かつ表情豊かなクラリネット・ソロなど、印象深いパートは数多い。


 ただそれを束ねるコバケンの指揮があまりにもゆとりが無い。
 モルダウなんぞ、楽想の切り替わるたびに「よっこいしょ」といわんばかりにテンポを動かす。
 やりたいことが沢山あるのかもしれないが、空回りしている部分も少なからず、というか、
 そこまでせんでも音楽はそれ自体十分語っているのに、さらになにかひねり出そうといういやらしさが感じられる。
 たしかにそうしたことを受け入れてくれそうな曲ではあるが、見ているこちらには漫画チックに見えてしまう。
 それをチェコ・フィルがその響きでくいとめているという感じが聴き終えてすばらくして湧き上がってくる。
 特に後半最初の「ボヘミアの牧場と森から」での聴きどころのポルカでは振り過ぎのため、
 音の響きはいいのだけれど、音楽がぎこちなくなってちっとも心が弾まない。
 しかし最後の2曲、やはりこの曲はチェコの人たちはおろそかにできないのだろう。
 先のプラハ放送響のときのように終盤を締める名演であった。
 特に先の4曲では、ややたがの緩んだ感のあったトランペット陣(ケイマル氏はじめファンが多いパート)
が引き締まった音を聴かせてくれた。それから「ブラニーク」でのかっこいいティンパニ!
 終曲自体はあまり過度な大音量は聴かれず。節度あるフィナーレ。
ただし最後の音を引き伸ばすのはなにか根拠があるのだろうか?
私には先のサン=サーンスの「オルガン」の最後のシンバルの「悪夢」を思い起こさせた。
  終曲後は例によってコバケンのオーバーなアクション、というかアトラクション。 
  東京でもやったらしいがスタンディング・オヴェイの強要はいかがなものか・・・。

  改めて小林の指揮についてまとめ。細かい部分にこだわった指揮で、
この作品について伝統ある「形」をもったオケから新鮮な発見もさせてくれる部分もあったが、
総じて「振り過ぎ」で、音楽の流れがぎくしゃくする部分が多々生じた感は否めない。

  結論 ブラヴォー!チェコ・フィル!!

  「チェコ・フィルの伝統としてこの曲の後はアンコールはやらないんです」
  当然じゃ!あふぉ!!おまえのトークもいらんわっ!!!

  結論を再確認 ブラヴォー! チェコ・フィル!!!

  ほぼ満席の聴衆、最初の4曲は終わるたびに拍手だったが、「ターボル」と「ブラニーク」の間では拍手無し。
  この点ではKitaraの聴衆はサントリーホールのそれより上手であった。

  終演21:00。

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2004年05月05日   札幌コンサートホール
                    Kitara子どもの日コンサート
                                                             
    当日券はS席30枚、A席200枚。S席はすぐ売れたようだ。
   尾高さん曰く、「子どもの日コンサートですが、大人が多い・・・」
   明らかに子ども連れというの客は普段より多いかなという程度。
   実際ツィクルスで好評だったベートーヴェンがメインだから、
   それが目当てのファンも少なくないだろう。

    まずは「未完成」の第1楽章。ゆったりとしたテンポは先日TVで見たN響での
   ブラームスを思い出させる。近年話題になる「>」はアクセントとして扱って、
   全体的に濃厚でかつエネルギッシュなイメージ。ただし第1主題でのオーボエと、
   クラリネットのバランスの悪さは気になった。

    続いて「新世界」の前半2楽章。楽想の変わり目の都度テンポを変えるタイプ。
   正直に言うとあまり好みではない。しかし第2楽章はなかなか「ツボ」にはまった
   演奏ではあった。

    以上2曲残念ながら「咳」が多かったのは事実。うちの坊主の「ちょろちょろ」より
   気になったことを「時節柄」あえて加えておく。

    

    尾高さんのトークはなかなか面白いのだけれど、マイクに声が乗り切らず残念。
   指揮台の前後を熊のようにうろうろするのもタレントとしては減点。
   以前NHKで黒柳徹子女史の番組にレギュラー出演してたのだが「ソロ」は不慣れなのかしら?

    後半は「運命」。大人たち?はこれがメインのはず。
   驚いたのはテンポ。両端楽章の反復をして35分を切るペースだからなかなかの快速。
   ただし第1楽章はふたつのフェルマータの扱いや作曲家の書いたダイナミクスのにやや無頓着。
   一番の勘違い?はオーボエのカデンツァ。あれをフォルテ(フォルティシモ!?)で吹ききった。
   中間のふたつの楽章はくつろいだアンダンテと、小刻みな音楽のスケルツォを自然体で対比した。
   そしてフィナーレである。自分のイメージでは尾高さんはこんな「ヤマをはる」人ではなかった。
   速めのテンポと強引なほどの力強い響きでぐいぐいと音楽を進めていく。
   ある意味でトスカニーニ的な演奏である。
   トロンボーンがとろくさかったり、ピッコロが前半弱かったりと、不満もないわけでないが、
   見事なクライマックスで曲を閉じた。

    振り返ると、「未完成」のゆったりとしたテンポと「運命」のアグレッシブなテンポの対比が耳に残る。
   「新世界」をカットしてシューベルトとベートーヴェンのゴールデン・カップリングでプログラムを組んだ方が
   尾高さんの演奏解釈も冴えたのではないかと感じた。

   トークにもあったが、名曲ゆえオケも指揮者も力が抜けないわけでお疲れ様と言いたい。
   アンコールに小気味よい「フィガロの結婚」序曲。 終演16:00。

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2004年04月13日   札幌サンプラザホール
                    トヨタ・マスター・プレイヤーズ・ウィーン
                                                             
   3度目のコンサート。驚いたのは客の入り、ほぼ満員。
   当日券はS席2枚、A席30枚。さすがト○タ!

   例によって趣味の悪い「イントラーダ」で開幕、そろそろやめたら?
   最初は「こうもり」序曲。十八番のシュトラウスとはいえ、
   リングアンサンブルの11人が1列に並んで弾くのとはわけが違う。
   31人で接続曲風の曲は指揮者なしではつらそうな部分もある。
   しかしヴァイオリンの高音の入りがスパッと揃った時の痛快さは、
   ほかでは聴けないものだ。

   続いて「釧路生まれ」の中嶋彰子のソロで2曲、まずはアデーレのアリア。
   立派な声でだが、高音の軽さに欠けアデーレのキャラクターにそぐわない。
   さらにその音程がフラット気味なのも減点。オケは劇場経験の豊かさを示す。
   短いけれどテンポを上げたエンディングは見事。
   2曲目は「春の声」。
   もともと演奏会用のワルツだけに、今度は中嶋の立派な声が物を言う。
   わずかに最低音がちょっと崩れたが、あとは申し分のない名演。
   オケではヴェヒター率いる第2ヴァイオリン以下の3拍子のリズムの
   生きの良さが際立った。個人的には今日1番の聴きもの。

    1度ステージが無人になって、こんどは「R=」シュトラウス。
    ソロはクラリネットとファゴットというわけで、ハープの吉野直子はステージの真ん中に陣取るが、
   他のメンバーと一緒に登場。情緒豊かな序奏で始まるが、あとは楽劇と、交響詩のチャンポンみたいで、
   ややまとまりに欠ける気がした。第1楽章?でハープが美しく繊細なアルペジョを奏でる。
   ソロの二人は一生懸命だけれど、曲のせいか丁々発止とはいかず乗り切れない感じ。

    後半はベートーヴェン。
    気になるのはやはりテンポの問題。今回は曲が曲だけに安定したテンポの維持が難しかったようだ。
    特に弦楽器の刻みが弾き納めでテンポが落ちてしまい、次の音楽への切り替えがスムーズにいかないのは、
    致命的である。他にも管弦のテンポのずれが気になるシーンが多々あったのは残念。
    一方で第2楽章後半や、第4楽章など対位的な動きの音楽では、緊密音楽が聴くことができた。
    第3楽章トリオでは3本のホルンが朗々とした響きを聴かせた。
    すべてのリピートを繰り返し、第1楽章コーダのトランペットもオリジナルどおりに吹かせていた。
    とにかく良くも悪くも指揮者なしの演奏であった。

    満員の聴衆だが、「英雄」では楽章ごとに拍手。やはり「自腹の」聴衆だけではなかったようだ。

    アンコールはなし、 終演、21:05。
  
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2004年02月26日   札幌サンプラザホール
                    ペーター ルーカス・グラーフ フルートリサイタル
                                                             
   昨年いろいろ言いながらも立派な音楽に満足したコンサート。
  コンサートがあるのを知ったのは3日前、急遽チケットを入手した。

   悪天候ながら、客席は6割ほどの入り、やはり楽器をやっているのか、
  学生さんらしき女性の姿が目立つ。

   前半、後半ともに3曲ずつ。前半はライプツィヒゆかりの作曲家達。
  最初のバッハは、残念ながら音の鳴りが悪く心配したが、
  2曲目の無伴奏からは、昨年同様に堅固なまでの音楽に圧倒された。

   楽しめたのは3曲目のライネッケ。ゆれるようなリズムを基調にした、
  幻想的なソナタを聴くことができた。

   後半、最初の2曲はフランス系の作品。ここでも「フランスらしさ」とは
  無縁で、飾り気は無いが音楽的には誠実で立派な演奏だった。
  最後に名曲中の名曲であるドップラーの「ハンガリー田園幻想曲」が
  取り上げられたが、これも恐ろしいまでにフォームの崩れの無い音楽だった。

   20分の休憩をはさんで、前後半ともにほとんど曲間は休まない、
  昨年同様年齢を感じさせないステージであった。

   とにかく技巧的には乱れが全くなく、飾り気のない手堅い音楽で、
  自らが音楽を語るというよりは、音楽そのものに語らせるというスタイルで、
  そこが逆に物足りないと感じる人もいたかもしれない。

   自分は、もともと聴かないジャンルだし、今回は2度目と言うこともあって、
  すぐに馴染めることが出来て、前回以上に満足できる演奏会であった。
   ピアノ伴奏は昨年と同じ方、今回は最初のバッハが音が大きいのを除けば、これも手堅いパートナー。
   アンコールは4曲、 終演、21:00。
  
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