2002年のコンサート


2002年11月02日   札幌コンサートホール マリー=クレール・アラン リサイタル
                                                             
    2度目のKitaraとなるアラン、前回はなぜかパスしてました。
   なんといっても私がガキのころから「オルガンの女王」だったわけで、
   それは今も変わらないという大物であります。

    プログラムはオール・バッハながら、なじみがない曲が多いです。

    プログラムの写真を見ると、大層立派な女性のように見えますが、
   現れたのは小柄な、上品な「おばさん」であります。

    繰り広げられるのは、中庸と言ってしまっていいのか、
   ひとつひとつの音があるべき形で過不足なく聴かれる音楽です。
    いまどきのバッハというと、この人はどんなことをするのかな?
   という趣味の悪い興味が先立つのですが、ここで聴かれるのは、
   楽譜のありのままが自然に、淡々と語りかけてくるような音楽です。
   奇抜な響きや、アーティキュレーションは全くありません。

    前半3曲はなぜか曲の冒頭で、ミスタッチといいますか、
   もたつくようなところが目立ちます。しかしBWV.572で聴かれた、
   大地に根付くような安定した音楽など見事なものでした。   

    後半は冒頭部のもたつきも目立ちませんで、より充実した音楽です。 
   最後のBWV.565あたりは先般耳にしたわが国の代表的な女流奏者の
   あまりにも未熟な音楽に比べると、次元が違います。

   

   アンコールに「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」、それから兄であるジュアン・アランの「リタニア」。
   実の味わい深いバッハ、そして、躍動的な「リタニア」。
   前者は、ここ数日平均睡眠時間4時間で、コンサート中もぼっとしていた私の背筋をしゃんとしてくれました。
   終演、17:05。

           コンサートインデックスへ
            トップページへ



2002年1月13日  夕張市民会館大ホール ウィーン・リング・アンサンブル

   今年最初のコンサートはウィーン・リング・アンサンブルです。
   12月になってPMF組織委員会からのDMでコンサートがあるのを知りました。
  チケットはローソン・チケットで購入、指定なしの前売りで大人1,000円也!
   プログラムを見ると今回の日本での演奏会の初日は4日!
  15日まで途中7日のみオフというハードスケジュールです。
   コンサートの2時間前に夕張入りしたウィーン・フィルのメンバーは疲れもみせず、
  15分の休憩をはさんで2時間弱の楽しいコンサートを繰り広げました。

   最初のニコライは前半こそ響きが硬い感じがしましたが、
  次第に音楽はしなやかさを増し、2曲目の「オーストリアの村つばめ」以降は、
  キュッヒルの艶やかな響きを中心にまったく文句のつけようのないものでした。
   シュルツ、シュミードルを中心に楽しい趣向も盛り沢山で楽しめました。
   前半で面白かったのがランナーの「モーツァルト党」という曲。
  「魔笛」、「ドンジョヴァンニ」のメロディーを巧みに3拍子にのせた曲で、
  後半に「魔笛」序曲の提示部とコーダをそっくりそのまま3拍子でやり通すのには
  驚きました。
   後半もおなじみの曲がそろい盛り上がりました。お気に入りは「新ピチカートポルカ」。
  アンコールには「おしゃべりなかわいい口」。元旦のウィーンでも取り上げられましたが  こちらの方が格段に楽しめました。
  続いて定番の2曲、シュミードルの先導で会場の拍手も楽しく終演となりました。

  約700席の会場は8分ほどの入り、なぜ満席にできないのでしょう?
                                                                    

                                                                        コンサートインデックスへ

                                                                        トップページへ

                                                                           


2002年3月9日   札幌コンサートホール ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

  今年Kitara初詣でのコンサートです。
   ブロムシュテットのブルックナー、モーツァルトという事で大いに期待しました。
   期待通りのヴァイオリン両翼配置です。

  
モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲
     先日の報道どおりヴァイオリン6人、コントラバスひとりという小編成です。
     じつに美しいモーツァルトで、そこが好悪の境目と言えるほどの美しさです。
     最近のピリオド楽器の使用によりメリハリのあるモーツァルトに
    慣れた耳にはやや起伏に乏しい音楽に感じられたかもしれません。
      ソロはふたりの美女、最前列にただひとり座っていた方が羨ましい!
    フルートのガルツリーはじつに美しく、よく通る音でした、
    ただ、メリハリには乏しいと思いました。
     ハープは期待の吉野直子さん、この曲はアーノンクールと録音済み、
    最初こそ音がやや鳴っていませんでしたが、しだいに調子をあげました。
    各楽章では音楽的にも視覚的にも美しいカデンツァを楽しみました。

  
ブルックナー:交響曲第5番
     オーケストラは一気に拡大、第1ヴァイオリンは16人、コントラバスは8人。
    ほとんどのメンバーが最初(唯一)のステージです。
     第1楽章はオケの調子が今ひとつで、全体として音のブレンドが雑で、
    ホルンなどかなりほころびがあり、先行きが危ぶまれました。
     しかし第2楽章からは豊かで美しい弦楽器の響きを中心に
    立派な音楽となりました。
     圧巻はやはりフィナーレ、そしてここでヴァイオリンの両翼配置が生かされました。
     音楽の立体感が視覚的にも感じられました。オケもここでパワーほぼ全開でホールいっぱいに響きが伝わります。
     最後の和音が決まったあとの聴衆の喝采は久しぶりのものでしたし、
     マエストロの表情も大変満足した様に見えました。

     ただ細かい点を言うなら、わが国で?ブルックナーに求められるだろう大家的な威厳に乏しいこと、
     ブルックナー独特の休止が短めで十分生かされていないこと、この点については賛否が分かれるかもしれません。

     オケの各パートではヴァイオリンの充実が注目に値し、各プルトが十分に鳴り、音に広がりが感じられます。
     特に第2ヴァイオリンが第1に劣らぬ活躍を見せたのは特筆に価します。チェロの響きも雄弁でした。
     管楽器ではオーボエがモーツァルトもあわせて芯のある豊かな響きでした。
    クラリネットが時折音の立ち上がりに品格に欠けるように感じました、
    ティンパニが全体的に控えめでもっと鳴ってほしいという場面がありました。
    金管は前半かなりあやしげでしたが尻上がりによくなりました。 
    アンコールはなく終演は21:20。帰路あちらこちらで満足の声が聴かれました。
 

                                      

                                                                                       コンサートインデックスへ

             トップページへ

                                                                    

                                                                           

 

 


2002年7月28日   札幌コンサートホール HBCジュニアオーケストラ

    一度聴いてみたかったのですが、なかなか機会がありませんで、
   今回はサン=サーンスをやるということでのぞいてみました。
   その筋では昔から「ジャリオケ」とよばれています。

    プログラムを見て驚いたのは年齢層の広さ、なんと最年少は小学2年生。
   ステージ上でその姿、なんとも小さいこと!
   
    1曲目で驚いたのは一斉に構えたフルート8本!と思ったら9本!!
   クラリネットも9人、トランペット、トロンボーンも人数が多く、全員がフル出場です。
    弦楽器は当然ヴァイオリンが多く、コントラバスは7人(賛助含む)。
    かなりいびつな編成といえます。

    演奏のレベルそのものの話はさておき、思ったことをいくつか。
    プログラムには指揮者をはじめ5人の指導者の名前が見られ、
   充実した体制が伺えます。
    自分も小さいころにこんな環境があればやってみたかったなと、
   うらやましく思いました。 

   ちょっとプログラムが盛りだくさんではないかなと気になりました。
   なおかつアンコールが3曲、全員がフル出場です。
   下級生にはかなりハードな経験ではないかな?と思わせました。
  それから指揮者も含め、団員達のステージ・マナーが経験不足のためか、いきあたりばったりで動いていまして、
  このあたりは「格好よく見せる」ための指導、あるいは打ち合わせも必要かな思いました。
  (自分も学生時代、どうやってメインからアンコールにつなげるか、いろいろ仮定して動きを考えてました) 
  拍手も時折途切れがちだったり、さらには花束贈呈でアナウンスが入ったりと、周囲の大人たちが雰囲気を
  「盛り下げて」いるようで私には妙に思いました。

  それにしても第2ヴァイオリン末席の子の弾きぶりのけなげなこと!
  「がんばれ、がんばれー」と、何度も目が向いてしまいました。

   プログラムは次の通りです。
      ワーグナー:「ローエングリン」第3幕への前奏曲
      フンパーディンク:「ヘンゼルとグレーテル」二重唱〜パントマイム
      R=コルサコフ:スペイン奇想曲
      サン=サーンス:交響曲第3番
      アンコール
      J=ウィリアムス:「ET」のテーマ
      マスカーニ:「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲(パイプ・オルガンが参加)
      J=シュトラウス:ラデツキー行進曲

            コンサートインデックスへ
            トップページへ


 

2002年9月14日   札幌コンサートホール 日本フィルハーモニー交響楽団
                               札幌公演 第2夜 小林研一郎指揮
                               
    毎秋恒例の日フィル。コバケンとサン=サーンスということで
   行って来ました。オルガンは井上圭子。
    1曲目はパイプオルガンのソロ、おなじみのBWV565。
    全体的に早めのテンポでかつ腰の軽い感じの演奏で、
   明快ではありますが、バッハらしさに欠けていて、
   私にはちょっと居心地の悪い音楽でした。フーガではペダルと
   鍵盤(足と腕です)の連携がスムーズさに欠け、おさらい不足の
   感がしました。しかし、フーガのコーダにやまをはった様な感じで、
   最後だけは分厚い響きが聴かれました。

    2曲目は今日の目玉といいますか、不安の種?といいますか、
   コバケンの自作自演であります。演奏前に簡単なレクチャー付です。
    プログラムの作者の言葉から感じられるとおり、奇抜さは狙わず、
   平易な音楽を目指した作風で、パッサカリアということもあり、大部分は
   ゆったりとした叙情的な音楽でバーバー風といったところです。
    聴いていて単純明快なスコアが見えてくるような曲の作りで、もう少し
   ひとつの部分で起伏があってもいいのではないかしらと思いました。
   30分ほどの長さ、全体としては興味深くそして楽しく聴けました。

    休憩をはさんで期待のサン=サーンス。
   ハンガリーのオケとの熱演の再現を期待したいところですが、
   第1楽章はヴァイオリンの響き、特に高音(=E線)が雑に聴こえまして、
   ちょっとがっかりしました。後半のオルガンはここでも低音不足でした。
   第2楽章は曲想もあり、第1楽章のような不満も感じませんでした。
   ただし連日のコンサートの疲れか、迫力不足でこじんまりとした感は
   否めません。

  驚いたのは最後の和音にシンバルとバスドラムを加えていたこと。
 バスドラムの音程がきちんとしていないことも加わり、私には悪趣味な改ざんに思えました。

  例によって、アンコールはコバケンのメッセージがあり、今回はさらに日フィルの団員(運営委員長氏)のあいさつも
 加わった。「祈り」をイメージにしたプログラムということでマスカーニ:「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲。
 パイプ・オルガンの井上はここでも演奏に参加して、今夜ただ一人「皆勤賞」を獲得しました。
 さらに大トリにサン=サーンスのコーダを再演。「祈り」のイメージには程遠い最後の打楽器の追加を聴かされて終演。

            コンサートインデックスへ
            トップページへ


2002年10月19日   札幌コンサートホール トヨタ・マスター・プレイヤーズ・ウィーン
                                                             
    前回はモーツァルトでいい演奏を楽しんだ記憶があります。
   今回はハイドン、ベートーヴェンを加えてのプログラムです。
    前回は両翼配置だったヴァイオリンは今日は上手にそろいます。
   弦の人数は5−4−3−2−2。

    プログラムをみると、ウィーン・フィルメンバーの数が減って、
   メンバーの平均年齢も若くなったように思います。

    最初は「コジ」の序曲、立ち上がりということもありやや粗さが 
   目立ちます。
    続いてソプラノのアリアを2曲、ソロはよく言えば丁寧ですが、
   生真面目な歌唱で、ロジーナのアリアではもう少し余裕といいますか
   表情に変化が欲しいと思いました。
   伴奏は調子が出てきたようで弦楽器がチャーミングな響きでした。

    続いてハイドンのチェロ協奏曲の第1番。
   ソロのテクニックは見事ではありますが、全体に線が細すぎて、
   それ以上の魅力にはやや乏しい感があります。
   ここはぜひ、他のプログラムにあるシュミードル、シュルツによる
   ダンツィの協奏交響曲を聴きたかったところです。

    前回は休憩中にホワイエで四重奏の演奏がありましたが、
   今回はなし。実はハイドンで各楽章で拍手が起きたのですが、
   後半開演前には「途中楽章での拍手はご遠慮ください」との
   アナウンスがありました。   

    後半はベートーヴェンの交響曲第7番、もちろん指揮者なしです。
   指揮者のいる演奏でもこの曲の場合、序奏のどこでテンポがきまるかむずかしいところですが、
   さすがにこのアンサンブルもでも、最初はちょっと不安定なテンポでした。
   オーボエ、ティンパニあたりは音程もあぶなかったように聴きました。

    予想通りというべきか、演奏はコンマスのシュトイデがぐいぐいと引っ張っていく形で進みます。
   その隣にはザイフェルトが座って、これまたダイナミックなボウイングで付いていきます。
    シュトイデも経験を積んできたためか、前回のような気負いは感じられず、堂々たるリード振りです。
   ヴァイオリン主導ということで、時折粗さが目立ちまして、そこが好悪の分かれ目となるかと思いますが、
   ベートーヴェン、それも第7番ということで、私としてはそれほど気になりませんでした。

   バランス的にはヴィオラがちょっと弱すぎで、対位的な音楽の部分では物足りなさを感じました。
   それから気になったのは弦楽器のフレーズの弾き収めが雑になりがちだったこと。
   このあたりはやはり指揮者なしのため、チェックが弱くなるのでしょう。

   管楽器は若い弦楽器に遠慮したのでしょうか、控えめに聴こえましたが全く不安げのない演奏でした。
   個人的にいつも気になるホルンもハイトーンですが、さすがにはずすこともなく、満足の行く出来した。

   フィナーレのコーダでは全員が体を揺らしての熱演で、大いに聴衆も沸きました。

   アンコールに「フィガロ」の序曲、ちょっと雑な仕上がりで残念でした。

   終演、18:05、やはりこの響きは、国内オケや学生オケでは聴けません。
   今度は正月、「リング・アンサンブル」待ち遠しい!

           コンサートインデックスへ
            トップページへ