繰り広げられるのは、中庸と言ってしまっていいのか、
ひとつひとつの音があるべき形で過不足なく聴かれる音楽です。
いまどきのバッハというと、この人はどんなことをするのかな?
という趣味の悪い興味が先立つのですが、ここで聴かれるのは、
楽譜のありのままが自然に、淡々と語りかけてくるような音楽です。
奇抜な響きや、アーティキュレーションは全くありません。
今年最初のコンサートはウィーン・リング・アンサンブルです。
12月になってPMF組織委員会からのDMでコンサートがあるのを知りました。
チケットはローソン・チケットで購入、指定なしの前売りで大人1,000円也!
プログラムを見ると今回の日本での演奏会の初日は4日!
15日まで途中7日のみオフというハードスケジュールです。
コンサートの2時間前に夕張入りしたウィーン・フィルのメンバーは疲れもみせず、
15分の休憩をはさんで2時間弱の楽しいコンサートを繰り広げました。
最初のニコライは前半こそ響きが硬い感じがしましたが、
次第に音楽はしなやかさを増し、2曲目の「オーストリアの村つばめ」以降は、
キュッヒルの艶やかな響きを中心にまったく文句のつけようのないものでした。
シュルツ、シュミードルを中心に楽しい趣向も盛り沢山で楽しめました。
前半で面白かったのがランナーの「モーツァルト党」という曲。
「魔笛」、「ドンジョヴァンニ」のメロディーを巧みに3拍子にのせた曲で、
後半に「魔笛」序曲の提示部とコーダをそっくりそのまま3拍子でやり通すのには
驚きました。
後半もおなじみの曲がそろい盛り上がりました。お気に入りは「新ピチカートポルカ」。
アンコールには「おしゃべりなかわいい口」。元旦のウィーンでも取り上げられましたが こちらの方が格段に楽しめました。
続いて定番の2曲、シュミードルの先導で会場の拍手も楽しく終演となりました。
約700席の会場は8分ほどの入り、なぜ満席にできないのでしょう?
今年Kitara初詣でのコンサートです。
ブロムシュテットのブルックナー、モーツァルトという事で大いに期待しました。
期待通りのヴァイオリン両翼配置です。
モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲
先日の報道どおりヴァイオリン6人、コントラバスひとりという小編成です。
じつに美しいモーツァルトで、そこが好悪の境目と言えるほどの美しさです。
最近のピリオド楽器の使用によりメリハリのあるモーツァルトに
慣れた耳にはやや起伏に乏しい音楽に感じられたかもしれません。
ソロはふたりの美女、最前列にただひとり座っていた方が羨ましい!
フルートのガルツリーはじつに美しく、よく通る音でした、
ただ、メリハリには乏しいと思いました。
ハープは期待の吉野直子さん、この曲はアーノンクールと録音済み、
最初こそ音がやや鳴っていませんでしたが、しだいに調子をあげました。
各楽章では音楽的にも視覚的にも美しいカデンツァを楽しみました。
ブルックナー:交響曲第5番
オーケストラは一気に拡大、第1ヴァイオリンは16人、コントラバスは8人。
ほとんどのメンバーが最初(唯一)のステージです。
第1楽章はオケの調子が今ひとつで、全体として音のブレンドが雑で、
ホルンなどかなりほころびがあり、先行きが危ぶまれました。
しかし第2楽章からは豊かで美しい弦楽器の響きを中心に
立派な音楽となりました。
圧巻はやはりフィナーレ、そしてここでヴァイオリンの両翼配置が生かされました。
音楽の立体感が視覚的にも感じられました。オケもここでパワーほぼ全開でホールいっぱいに響きが伝わります。
最後の和音が決まったあとの聴衆の喝采は久しぶりのものでしたし、
マエストロの表情も大変満足した様に見えました。
ただ細かい点を言うなら、わが国で?ブルックナーに求められるだろう大家的な威厳に乏しいこと、
ブルックナー独特の休止が短めで十分生かされていないこと、この点については賛否が分かれるかもしれません。
オケの各パートではヴァイオリンの充実が注目に値し、各プルトが十分に鳴り、音に広がりが感じられます。
特に第2ヴァイオリンが第1に劣らぬ活躍を見せたのは特筆に価します。チェロの響きも雄弁でした。
管楽器ではオーボエがモーツァルトもあわせて芯のある豊かな響きでした。
クラリネットが時折音の立ち上がりに品格に欠けるように感じました、
ティンパニが全体的に控えめでもっと鳴ってほしいという場面がありました。
金管は前半かなりあやしげでしたが尻上がりによくなりました。
アンコールはなく終演は21:20。帰路あちらこちらで満足の声が聴かれました。
一度聴いてみたかったのですが、なかなか機会がありませんで、
今回はサン=サーンスをやるということでのぞいてみました。
その筋では昔から「ジャリオケ」とよばれています。
プログラムを見て驚いたのは年齢層の広さ、なんと最年少は小学2年生。
ステージ上でその姿、なんとも小さいこと!
1曲目で驚いたのは一斉に構えたフルート8本!と思ったら9本!!
クラリネットも9人、トランペット、トロンボーンも人数が多く、全員がフル出場です。
弦楽器は当然ヴァイオリンが多く、コントラバスは7人(賛助含む)。
かなりいびつな編成といえます。
演奏のレベルそのものの話はさておき、思ったことをいくつか。
プログラムには指揮者をはじめ5人の指導者の名前が見られ、
充実した体制が伺えます。
自分も小さいころにこんな環境があればやってみたかったなと、
うらやましく思いました。
ちょっとプログラムが盛りだくさんではないかなと気になりました。
なおかつアンコールが3曲、全員がフル出場です。
下級生にはかなりハードな経験ではないかな?と思わせました。
それから指揮者も含め、団員達のステージ・マナーが経験不足のためか、いきあたりばったりで動いていまして、
このあたりは「格好よく見せる」ための指導、あるいは打ち合わせも必要かな思いました。
(自分も学生時代、どうやってメインからアンコールにつなげるか、いろいろ仮定して動きを考えてました)
拍手も時折途切れがちだったり、さらには花束贈呈でアナウンスが入ったりと、周囲の大人たちが雰囲気を
「盛り下げて」いるようで私には妙に思いました。
それにしても第2ヴァイオリン末席の子の弾きぶりのけなげなこと!
「がんばれ、がんばれー」と、何度も目が向いてしまいました。
プログラムは次の通りです。
ワーグナー:「ローエングリン」第3幕への前奏曲
フンパーディンク:「ヘンゼルとグレーテル」二重唱〜パントマイム
R=コルサコフ:スペイン奇想曲
サン=サーンス:交響曲第3番
アンコール
J=ウィリアムス:「ET」のテーマ
マスカーニ:「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲(パイプ・オルガンが参加)
J=シュトラウス:ラデツキー行進曲
驚いたのは最後の和音にシンバルとバスドラムを加えていたこと。
バスドラムの音程がきちんとしていないことも加わり、私には悪趣味な改ざんに思えました。
例によって、アンコールはコバケンのメッセージがあり、今回はさらに日フィルの団員(運営委員長氏)のあいさつも
加わった。「祈り」をイメージにしたプログラムということでマスカーニ:「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲。
パイプ・オルガンの井上はここでも演奏に参加して、今夜ただ一人「皆勤賞」を獲得しました。
さらに大トリにサン=サーンスのコーダを再演。「祈り」のイメージには程遠い最後の打楽器の追加を聴かされて終演。