『きっかけ』
『弘樹編について』
人物紹介的な意味合いが強かったからだろうか、ユーザーを引き込むにはちょっと物足りない感じだった。どうせなら途中まで繰り広げられる和やかな会話なんかは省略してすぐさま本編に移っても良かったような気がする。「謎の人物山田」
今一な感じだった弘樹編で唯一印象に残っているのが謎の人物山田である。彼に関しては何もかもが怪しげだった。馴れ馴れしい挨拶に始まり「オレ、山田ァ〜」と挨拶するところなんか怪しさ加減大爆発という感じだった。一応自己紹介してるけど、この様子だと本名を名乗ってるとは到底思えない。ガス屋が来ると偽って弘樹をアパートに引き留めたのも何か企みがあるのでは勘ぐってしまう。敢えてシャドーグラフィックにしていることもあからさまに不振人物だということを煽っている。そんなこんなで不審者山田のことでちょっと笑ってみたものの、冗談だと思っていられるのは今のうちで、そのうち本気で洒落にならない展開になってしまうのだろう。『瞳子編について』
恋人との関係がなんとなく微妙な感じが見受けられるところに流行りもののネットオークションを絡めて事件に巻き込まれていくところはそこそこ楽しめた。「恐るべきバッドエンド【四ヶ月目の終焉】」
どんどんと深みにはまる瞳子の哀れな末路を描いた【四ヶ月目の終焉】にはこれまでの眠気を覚ますに十分な衝撃があった。短いながらも絶望に打ちのめされ精神が崩壊して破滅の道へと辿る過程はかなり凹まされたし、スタッフロールで流れる悪意と嘲笑と蔑みで事件のことを揶揄する掲示板を見ていたらやり切れない憤りを感じた。『圭一編について』
これまでと比べものにならないくらい話がしっかりしていた。河合圭一(以下圭一)と氷上有紗(以下有紗)との特殊な出会いから始まる馴れ初めは悪くはない。さらに呪いで人が死んでしまうなんていうオカルト系の話が加わる頃には先が知りたいという欲求が強まっていった。『本編弘樹編について』
本編に入って圭一達と合流するようになってからはだんだんと面白味が出てきた。同じ被害者同士が徒党を組んでEDENに立ち向かうまでの流れや敵に捕まってからの様々なやり取りの中で生まれる趣向を凝らしたドラマも結構良かった。また、各種用意されたエンディングでは『ありますよねぇ……?』の結末が印象に残った。弘樹と咲かおり(以下かおり)が受けた仕打ちはもちろん、彼がトランクに閉じこめられた状態で現実を認識しようと思索するところなんかは総毛立つ思いがした。「悠里犬奴隷ルートについて」
悠里が犬奴隷になってしまうルートは確かに気が滅入らされるけど、いきなり犬になってしまった悠里を見せられても何を思えばいいのか困ってしまう。それに、後で分かることだが、調教そのものが完全では無かったというのもなんだかなあという気持ちを煽ってしまっている。ここはやはり彼女が犬として自覚するまでの過程をきちんと見せるべきだった。付け加えればその方法が理に適っていて本当に出来るのではないかというおぞましさもあれば、弘樹と同じような憤りを感じられたのではないかと思う。「弘樹グランドエンドについて」
結末までの間に見られる心理描写や事件背景が多少おざなりというのが残念だけど、全体で見れば上手くまとめられていたと思う。それに、なんだかんだいってもハッピーエンドを迎えることによって得られる安堵感は捨てがたいものがある。『本編圭一編について』
基本的には本編弘樹編と同じで無駄な会話は一切なく、伝えたいことだけを要点を絞って説明してくれる心地いい会話だった。また、視点が圭一に変わることで彼が抱える大まかな心境はもちろん、EDENに対してどのように反撃したのかという興味深い部分も明らかになる。「各種バッドエンドについて」
本編弘樹編に負けず劣らずの惨たらしい展開ではあったが、そこに到達するまでの過程はこちらも同様に端折られている。そのためか、これといって強く印象に残ったものはないものの、一定レベル以上の範疇でまとまっていたとは思う。「圭一グランドエンドについて」
視点が変わりEDENの連中を出し抜いていく様子がより鮮明になったことで、諸悪の根元を叩きのめす爽快感が増したのは嬉しい限りだ。あとは、基本的に本編弘樹編と一緒でホッと一安心する心温まる一幕で締めくくられている。『かおり編』
交換日記によって明らかになる実奈美の異常な愛情表現には鳥肌が粟立った。残念ながら彼女の態度が徐々にエスカレートしていくに従ってかおりが青ざめていくまでを詳細に書き記してはなかったけれど、身の毛のよだつ空恐ろしい展開が凝縮されたシナリオには充分満足している。「実奈美を一概に責められない」
日記など断片的に知り得た情報から推測してみると、実奈美も被害者の一面があるように思われる。だからといってストーカーに走って良いはずはないんだけれど、少なくとも同情の余地はあると思っている。『駿平編について』
なんだかよく分からなかった。何故、頼子(仮称)は駿平や実奈美を必要としたのだろう。顔立ちが綺麗だからか、それとも手なずけやすい性格をしているからか、一応最後まで見てみたものの、はっきりしないまま終わってしまった。
『ゲームシステムについて』
基本的な操作環境は「君が望む永遠」「君がいた季節 フルボイスバージョン」と一緒(開発はアージュなので当然といえば当然)なので単純にゲームを進める分にはなんの支障もない。『選択肢について』
シナリオはいくつかに分割されていて、それぞれで特定の選択肢を選んできちんと終了させないと新たな選択肢が出現しないというかなり分かりづらい仕組みになっていた。また、それまでに終了させたデータ(どの選択肢を選んだのかも含め)も逐一記憶しているので、本編で別のルートに変更するには弘樹編と圭一編を最初(の選択肢)からやり直さなければならない。いくらスキップ機能があるといって一度出現した選択肢を消滅させてしまったり、同じ選択肢でも状況によって行き着くシナリオが違うというのはちとやりすぎではないかと思う。『声優について』
全体的にレベルが高かったので安心して聞くことが出来た。その中でも有紗と実奈美は群を抜いていた。有紗はしっかり者のお姉さんという穏和なところやいざという時に発揮される芯の強さという感じがよく出ていたし、実奈美も感情の起伏を見事に使い分けるという離れ業をやってのけていた。2人の演技の巧さには感心しきりだった。『今回のシナリオで思ったこと』
今回は敢えてきつい表現を避けて読みやすさを優先した配慮がなされていたような気がする。特に獣姦や○カトロなどの残酷極まりない場面でもずばりそのものというCGや文章は避けて抽象的な表現で和らげられようとしていることからもそのような意図が伺える。『結論』
前作(未プレイなので評判のみ)のようなシナリオ(精神的に追いつめられていく過程をリアルに表現したもの)を期待していていると肩すかしを食らうことになる。しかし、EDEN対被害者達による戦いで繰り広げられる群像劇としての面白さは十分に発揮されているので、その手のシナリオが好きなら試してみる価値はあると思う。タイトル | 対応機種 | 発売元 | 発売年度 |
螺旋回廊2 | win95、98、Me、2000Pro | ルーフ | 2001年 |
タイトル | 対応機種 | 発売元 | 発売年度 |
君が望む永遠 | win95、98 2000、Me |
アージュ | 2001年 |
君がいた季節 フルボイスバージョン |
win95、98 2000、Me |
アージュ | 2001年 |