君が望む永遠(その3)
2001年9月1日作成
最終更新日 2001年10月21日


【キャラ別感想2】

大空寺あゆ(以下大空寺)

 此奴の言い方にはいちいち棘があるけどすっきりさっぱりした性格は見ていて気持ちがいい。誰に対してであろうが本能ままに突っ走る性格は賞賛に値する。そんな大空寺と孝之によるど突き漫才のような掛け合いはなかなか面白かった。中でも「機嫌が悪いから(正解は気分が悪いから)奥で休んでくる」という自分勝手極まりない台詞には大笑いさせてもらった。

『理想の上司、崎山健三(以下健さん)』

 大空寺シナリオ(玉野まゆも含む)では殊の外、健さんの人柄の良さが目立ったように思う。彼のように大らかで懐の広い心を持つ人間なんてなかなかいない。健さんがいてくれれば何か問題が起こりそうになってもさりげなくフォローを入れてくれるので、彼のいるファミレスだったら安心して働けそうだ。相手の気持ちを第一に考えてくれる健さんはまさに理想の上司そのものといえよう。
 彼女のシナリオでもう一つ気づいたことがある。それは健さんって実はエスパーではないかと思えるくらい人心術に長けていることだ。まるで相手の気持ちを見透かしているかのような台詞の数々を聞いていると余計にそう思えてしまう。

「健さんに教えられたこと」

 なるほど、確かに大空寺は健さんのいうように「不器用な人間」かもしれないな。素直じゃないから本当の気持ちを言い出せなくなってしまう。心のどこかでは優しく接してほしいと思っていても普段の性格が邪魔をして言い出せずにいる。それを考えたら大空寺もなかなか可愛いところがあるな、なんて思ったりしてしまう。
 こんな風に思えるのも全て健さんのおかげだな。彼の的確な指摘によって大空寺の魅力というのが見えてきたことを考えると、改めて健さんは凄い人物なんだなって思う。

『事の真相がようやく理解できた』

 大空寺が「スイス銀行に振り込んで後悔させてやる」と叫んだことに孝之が「オレ、ヒットマンに狙われるのかな」という受け答えの謎がようやく解けた。ようするに彼女の携帯に登録されている超有名な凄腕スナイパー「13(笑)」(おそらく愛称はゴ○ゴ)に頼んで暗殺を謀られるのではないかと危惧したからだ。それが分かった途端、笑わずにはいられなくなった。

『大空寺節大炸裂!!とその裏側にあるもの』

 水月と唯一の対決シーンで炸裂した大空寺節は見ていて気分爽快だった。孝之との関係を元通りにしようと水月は必死になっていた。「私はこんなにも奉仕しているのよ、だからあなたもその見返りを頂戴」という彼女に哀れみを感じたのだろう。大空寺は「女々しいこというなや」といって啖呵をきった。それからも大空寺は水月を叩きのめすかのような毒舌を展開し、最後に「合い鍵も投げてよこすとかっこいいわよ」といってトドメを刺した。
 言いたい放題ですっきりしたかと思っていたら、実は大空寺自身にも言い聞かせていたんだな。父親に認められたくて一生懸命に言うことを聞いてきた。それなのにちっとも理解してもらえなかった辛さというのが身にしみて伝わってきた。

『あゆエンド(一応バッド含む)について』

 そもそも大空寺の魅力というのはやりたいほうだいに暴れまくることにあったはずだ。だから彼女の場合は周りが戦々恐々とするような暴走っぷりを物語の中心に据えて、孝之との馴れ初めなんかは一切無くてもよかったように思う。


玉野まゆ(以下まゆまゆ)

 SSで繰り広げていたドジでおっちょこちょいな性格は本編でもいかんなく発揮されていた。一方、孝之はというと、これまでで2番目に酷い(1番は茜妊娠エンド)最低人間っぷりを披露している。自分を守ることしか頭にない孝之に何度も怒りをぶちまけたい気持ちにさせられた。
 性懲りもなくヘタレる孝之に幾度となくうんざりしていたからだろうか、気がつくとまゆまゆの純粋な笑顔が一服の清涼剤になっていた。彼女はちょっと、いや、かなりの天然ボケで周りを困らせることがあるけど、無敵の笑顔と人一倍に頑張ろうとする姿勢には心から癒された。

『孝之には悪いことをしたという自覚が無さ過ぎる』

 いつものように孝之がヘタレていると健さんがいろいろとアドバイスを授けてくれた。しかし、そんなことに耳を傾けるような殊勝な気持ちなんか微塵もなく「自分は悪くない。悪いのはみんなの方だ」と虚勢を張り続けた。
 その後も茜、水月、大空寺らから口を揃えて「最低!」と罵られても平然としている孝之は空前絶後の屑人間といっても過言ではない。そんな彼に反省という2文字は存在しないのだろう。それに反省を促そうとしたところで「責任なんかある訳ないだろ。ふざけるな」と言わんばかりの態度で睨まれるのがオチだ。

『まゆエンド(バッド含む)について』

 いずれにしても孝之にとって都合のいい結末だった。結局彼は最後まで問題を解決しようという意志は一切見せなかった。まゆまゆとの関係にしても心から悩むという展開は残念ながらなかった。こんなことなら、いっそのこと神の裁きが下ることで生涯悲惨な生活を送る羽目になるような残酷な最後を迎えてくれた方が世の為人の為になったのではないだろうか。


穂村愛美(以下マナマナ)

 もっとも恐ろしいと感じたのは孝之に対して行ったお仕置きに他ならない。マナマナのいっちゃてる様子(特に眼鏡越しに見下ろす表情がメチャ怖かった)や虐待の内容なんかは目を覆いたくなる。それに、彼女の時だけ性描写が露骨(星乃文緒と天川蛍は除く)なことも狂気の世界をより一層引き立たせている。
 総じて見ればただただ恐ろしい話だったかもしれない。眼鏡っ娘のイメージもさらに悪くなったことだろう。けれど、それだけではなかったとも思っている。
 確かにマナマナの行動は常軌を逸してたけど、その背景にあるもの(家庭の事情など)を見ていると複雑な気持ちにさせられたのも事実だ。

『事実を知れば知るほど水月が可哀想になってくる』

 マナマナシナリオになって初めてこちら側の思っていること(態度をはっきりさせろなど)を孝之の親友である平慎二(以下慎二)が代弁してくれた。孝之と水月の様子を見て慎二が「二股なんてかけるんじゃねえ」と叫ぶのも無理はない。
 また、このシナリオでなければ見ることの出来ない事実(携帯の登録から遥の番号を抹消したこと)を知った。慎二が「現実を見ろよ」というのもこれでよく分かった。2年前、遥と決別するという一大決心をしたのであれば、男らしくけじめをつけるべきだった。
 こうしていろんな側面から水月の事実を知れば知るほど、必要以上に甘えたり怒鳴り散らしたりする彼女が可哀想に思えてしまう。

『複雑な感情に支配される』

 孝之の性格を考えると非常に珍しい現象が起こる。いつもなら何事も有耶無耶にしようとするのに、マナマナシナリオではあっさりと諦めようとしているからだ。どこか醒めた気持ちで何もかも放り出そうとする孝之を見ていると、ちょっと同情したくなってくる。しかし、マナマナ以外での彼の悪行を考えれば、監禁や手酷いお仕置き等の屈辱は甘んじて受けなければならないとは思っている。そういう意味ではマナマナが他のヒロイン達に代わって制裁を加えてくれているのかもしれない。
 それでも、いざ天誅が下されてみると、孝之がどんな奴だったかは関係なく、可哀想に思えてしまった。全財産は没収され、親友には愛想をつかれ、そして、信じていた水月にさえも見放されたことで、何もかも失ってしまった。この時の無様な様子を見ていたら、なんともいたたまれない気持ちになってしまった。

『孝之のことで初めて感動した(愛美エンド)』

 正直言って手放しで誉められた話ではないことは承知している。孝之にしてみたらそうせざるを得ない状況に陥っていたし、端から見れば2人の光景が異常だということも理解している。だがしかし、愛する女性の為に周りの目も気にせず全てを投げうつ姿を見ていたら、そんなことはどうでもいいと思えてしまう。
 これまでの孝之は誰かが介在するまで何もしようとしなかった屑男だった。それがマナマナの時だけは別人のように本気で尽くそうと努力を惜しまなかった。孤独に苛まれている彼女の心を救おうとする孝之の真摯さには素直に感動させられた。そして、彼の気持ちが伝わった時のマナマナの幸せそうな表情を見ていたら思わず涙ぐんでしまった。おそらくこんな風に思うのは自分だけかもしれないけれど、幼少の頃から親の愛情を受けられなかったマナマナが、形はどうあれ幸せになってくれて本当に良かった。


星乃文緒(以下文緒っち)

 文緒っちにはバッドエンドしかない。それもとってつけたようなおまけといった感じのしょうもない低俗な内容だった。これだったら別に文緒っちは選べなくても良かったように思う。


天川蛍(以下蛍)

 前半はどうでもいい内容だったのに、後半に入って蛍と手紙をやり取りする辺りから物語にのめり込んでしまった。それもどんな結末を迎えるのかは分かっていたにも関わらずである。理由は蛍の人柄の良さをきちんと描ききったからだと思う。特に最後の手紙なんかは涙なしに読むことは出来なかった。

『最後はきちんと感動させてもらった(蛍エンド)』

 おかしいな思い始めたのは以前書いたのと同じような手紙が届いた時だった。この時点で蛍はすでに他界してるんだろうなとは思っていた。そして、この手紙は看護婦か誰かに自分が死んでからも孝之に手紙を書いてほしいと頼んだのではないだろうか(実際は文緒っちに頼んでいた)。でなければ、2度も同じよう文面になるはずがないからだ。
 そうこうしてどんな結末になるのか分かりきった状況ではあったんだけど、いざ蛍の事実が分かると、やはり悲しい気持ちになってしまった。ただし、これだけで大きな感動をさせるにはちょっと物足りない。より大きな感情を呼び起こすには蛍の遺書というか、最後の手紙みたいなものが残されていると、かなり涙腺が緩むだろうとは思っていた。
 そしたら予想通りの展開になったんだけど、それでもやっぱり泣けてしまった。手紙には恨めしさや悔しさというものを微塵にも感じさせない蛍のありのままを告白した文面が書きつづられている素晴らしいものだった。個人的にはこれが読めただけで大満足だった。その後の前向きに生きていこうとするエピローグなんか蛇足とさえ思っている。それくらい蛍の残した手紙は掛け替えのない大切なものに感じられた。