ISOLA 多重人格少女
2001年3月4日作成
加筆修正して 2001年3月5日掲載

『一通り見ての感想』

 正体不明の人格によって引き起こされる数々の事件は確かに怖い。まるで暗示が掛かったかのように自殺していく様子は『映画 催眠』と同じくらい寒気がした。そのためサイコホラーとしての恐怖は味わえると思う。

『個人的に思ったこと』

 ただ、それ以外は大したことがなかった。おざなりな恋愛要素訳を加えた訳の分からないストーリーは展開がかなり強引でお世辞にも面白いとは言えない。肝心の多重人格少女もあまり意味が無いように思われる。てっきり度重ねる精神的な苦痛によって悪魔の人格が生まれ、そいつが暴れ出すんだと思っていた。とこらが実際は、まったく関係のないところで誕生した怨念の人格が、たまたま解離性同一性障害(多重人格)をわずらっていた少女『森谷千尋(以下千尋)』の心に入り込んだというものだった。
 この設定なら心の中に入り込まれる少女は別に多重人格である必要はないと思う。というより、心を病んでいる人なら誰でもよかったように思えて仕方がない。そのためか千尋の苦しみはほとんどクローズアップされない。彼女がどれほど苦しんだとか、どのようにして12人もの人格が登場したかははっきりさせないまま終了してしまっている。また、最後に千尋は笑顔を見せ、回復の兆しを見せているが、これも謎のままである。せっかく多重人格少女を登場させたのだからもう少し彼女に関してフォローがあってもよかったのではないだろうか。重要な役割を担った人物だけにあの展開は納得いかない。

『結論』

 サイコホラーの恐怖感はあるものの、細部の作り込みが甘いので、あまりお勧めは出来ないな。


【今回見た映画】
タイトル媒体 発売元発売年度
ISOLA 多重人格少女 DVDビデオ 角川書店2001年


【参考資料】
『映画』
タイトル媒体 発売元発売年度
催眠DVDビデオ 東宝2000年


パーフェクトブルー
2001年1月19日作成
最終更新日 2001年2月24日

『どんな内容か』

 主人公霧越未麻の存在をもう一人の自分が脅かしていく。映画『パーフェクトブルー』はそんな人間の精神異常をえがいたサイコホラーである。未麻が精神的に追いつめられるところは現実に有り得そうで非常に怖かった。
 『パーフェクトブルー』では日常的に起こりうる現象を多くとりいれている。例えばアイドルが女優に転身することはよくある話ではある。このことを好ましく思わない熱狂的なファンから抗議の手紙がくることも、十分考えられる。そして身の回りの変化があまりにも早すぎたために、未麻の精神が徐々に崩壊していく。ストーカーの存在、アイドル時代の自分の幻影、周辺で起こる連続殺人など様々な事件が彼女の身の回りで次々と起こる。だが、これらは実際に起こったことなのだろうか。それとも未麻だけが見た幻覚なのか。ラストを見ただけではどこまでが現実で、どこまでが虚構なのかは結局わからないままだった。

『リアルな風景』

 それにしても部屋の様子は非常にリアリティーだった。小物が細かく配置されているので、生活をしている感じがでている。あと夜の間に限るが建物の描写が実写と間違えてしまうほどリアルなのも驚いた。特にビルやマンションの壁の色彩は本物と区別がかない。

『BGMについて』

 劇中で聞いてるぶんには曲で怖がるようなことはなかった。しかし、サントラCDを聞いていると、とてつもない不安や恐怖におちいる。それくらい趣向を凝らした内容になっている。特に「悪夢」で人がうなっているような音には鳥肌が立った。この曲を聞いてるだけで本当の悪夢にうなされそうな錯覚に陥った。現実の社会で聞こえてくる音を使っているのも恐怖をあおるのに一役買っている。中でも蛍光燈がついているとき鳴り響いている部分では、鳥肌がたってしまう。今敏監督がいう「蛍光燈の下の恐怖」という感覚が凝縮されている。

『一際目立つ色』

 インタビューなどを見て気がついたんだけど、この映画では「赤色」を意図的に目立つようにしていた。それを意識して背景などを見ていると確かに赤だけが一段と目立っている。もともと赤は「情熱」を表すと同時に「恐怖」も表す。それを考えるとたかが色とはいえ、言い知れぬ恐怖を感じてしまう。

『結論』

 現実に起こりそうな恐怖を「視覚、聴覚」で体験できる。サイコホラー好きなら見ておいて損はないと思う。


【今回見た映画】
タイトル媒体 発売元発売年度
パーフェクトブルーDVDビデオ パイオニアLDC1998年


【参考資料】
『CD』
タイトル 発売元発売年度
パーフェクトブルー
オリジナル サウンドトラック
アイノクス1998年

『本』
タイトル作者 出版社出版年度
色彩と心理おもしろ辞典松岡 武 三笠書房1994年