機動戦艦ナデシコ
2001年3月26日作成
加筆修正して 2001年7月8日掲載
『全般的な印象』
涙を誘う感動的な物語、つぼを押さえた笑い、あっちこっちで展開されるラブコメ、昔の熱血ロボットものを彷彿させる劇中アニメ、人の話を聞かない身勝手な登場人物など内容はこれでもかというくらい充実している。そのため何度見てもいろいろと考えさせられることが多かった。
『思いこみの激しさがこのアニメの全てを物語っている』
中でも目に付くのが、昔ながらのロボットアニメを意識した演出の熱さだ。当時は当たり前のように必殺技を叫びながら攻撃していたけど、『機動戦艦ナデシコ(以下ナデシコ)』では固有の技名こそないものの、パイロットが勝手に命名して昔ながらに叫びつつ突撃する。もちろん『ナデシコ』ならではの冗談もあって、ゴートが「音声入力なのか」のつっこみには笑わせてもらった。
劇中劇『ゲキ・ガンガー3』もおまけにしては凝っている。内容は昔ながらのロボットアニメの再現といった感じで、地球侵略をもくろむ異星人と戦う正義を愛する若者達という単純だけどワクワクするストーリーだ。他にも研究所に貼られるバリアなんていうマニア泣かせの懐かしい代物など、分かる人には嬉しい演出が随所に見られた。
劇中劇は本来おまけの存在なんだけど、『ナデシコ』では本編と密接な関係にある。特に総集編と呼べる14話では『ゲキ・ガンガー3』の視点から『ナデシコ』を見るという前代未聞の離れ業をやっている。そこでは総集編についてあれこれ意見するばかりか『ナデシコ』を参考に新しい兵器を開発するなど、なかなか面白いことをやっている。
あと、どうでもいいことだけど、『ゲキ・ガンガー』のオープニングには「〜ケレル」、劇中の背景には「KEREL」という看板を見かけた。恐らくスタッフの中に『コサキン』のファンがいるのだろう。自分もたまにラジオを聞いているので、こういうマニアックなネタをやってくれると妙に嬉しかったりする。
熱い血をたぎらす漢〈おとこ〉『ダイゴウジ・ガイ(以下ガイ)』
普段からガイは熱血馬鹿なことばかりするんだけどどこか憎めないことろがある。それになんといっても彼が一番『ゲキ・ガンガー3』を愛していた。自分もこういうタイプのアニメは好きなので彼があんなに大騒ぎしてしまう気持ちは分からないでもない。このようにもの凄く存在感をアピールしていたんだけど3話の最後でいきなり死んでしまう。キャラが立ってただけに残念でならない。
それからは幽霊(?)としてちょくちょく出て来るんだけど、最高の見せ場は『ムネタケ・サダアキ(以下ムネタケ)』が無様に自爆してしまう直前に幻(?)として颯爽と現れるところだ。始めに『ゲキ・ガンガー』が飛んでくる痺れる展開に加え、ガイがパイロットとして搭乗しているという粋な計らいをしていたのがなにより嬉しい。そして、ガイを死なせてしまったことを気にするムネタケには「正義の味方は過去にこだわらないさ」と言うと一緒に散っていく。ここにガイの格好良さの全てが凝縮されていたのではないかと思う。
『ちょっとしたことで死んでしまう人々』
これだけでも十分面白いんだけど、そうした楽しい面ばかりでないのも『ナデシコ』の特徴だと思う。よく人の死を目の当たりにするけれど、その度に戦争の怖さというものを実感させられる。象徴的なのがガイで、たまたま逃走の現場を見られたというだけで撃たれてしまい、そのまま返らぬ人となってしまう。そのあまりのあっけなさに「何故ガイでなければならないんだ」という気持ちで一杯になった。
『BGMについて』
控えめな演出だったので番組中はたいして気にしていなかったが、改めてCDで聞くとオーケストラを基調とした壮大な曲が多いことに気づく。劇中劇の曲はいかにも熱血さを強調したものが多く、中でも『正義のロボットゲキ・ガンガー3』なんかは聞いてるだけで熱いものを感じた。そして、極めつけは「星野ルリ(以下ルリルリ)」が歌う「あなたの一番星になりたい」であろう。あのルリルリの声で歌ってくれる。ただそれだけで十分幸せな気持ちになるのはどうしてだろう。きっとそこには上手いとか下手とかいう次元を超越した何かがこの曲にはあったんだと思う。
『最後に』
つじつまの合わないところが多いけど、一つ一つのエピソードは丁寧に作られているので、誰でも気軽に楽しめる作品になっていると思う。
【今回見たアニメ】
タイトル | 媒体 |
発売元 | 発売年度 |
機動戦艦ナデシコ VOL.1〜7 |
DVD ビデオ | キング レコード |
1999年 (VOL.1) |
【参考資料】
『CD』
タイトル | 発売元 | 発売年度 |
機動戦艦ナデシコ CD−001
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キング レコード | 不明 |
機動戦艦ナデシコ「明日の艦長は君だ!」
|
キング レコード | 不明 |
機動戦艦ナデシコ
これがホントの「3枚目」?
|
キング レコード | 不明 |
『フィルムブック』
タイトル | 発売元 |
出版年度 |
機動戦艦ナデシコ フィルムブック 1〜3
|
角川書店 | 1997年(1) |
彼氏彼女の事情
2000年7月15日作成
加筆修正して 2001年5月11日掲載
『全般的な印象』
原作の良さを生かしつつ、オリジナルの要素を巧みに取り入れている。それに、なんといってもあらゆる面で意図的な演出が感じられるのがたまらなくいい。リズミカルな場面の切り替え、BGM挿入のタイミングなどが効果的に使われていることも心地よさを上昇させている。
『画面切り替えの妙』
オープニングから見応えのある映像でビックリした。曲のリズムに合わせて画面を切り替えていくんだけど、これがまた絶妙なタイミングなので何度見ても感心してしまう。
あと、目立たないけど総集編のつなぎ方も密かに気に入っている。特にACT14、3「これまでのお話(中編)」のつなぎ方は見ていてゾクゾクするほど音楽と一体化していた。
『内面の表現が面白い』
例えば、『宮沢雪野(以下宮沢)』の心境は信号で表現している。『有馬総一郎(以下有馬)』に敵意を表わしていた時、信号は赤を示している。で、心に微妙な変化が表れると、信号は点滅しだす。仲良くなると信号は青になる。これはこれで面白いが、さらに興味深い演出を発見した。
ACT22.0で宮沢と十波が楽しく話している場面で、たまたま近くにいた有馬の気持ちを車の渋滞という意味深な表現していた。面白いのは有馬が二人の側にいないときは静か、もしくは時折クラクションを鳴らす程度にしている。ここに有馬が近づくにつれクラクションの数が増えていき、やがては鳴り止まなくなる。つまり、音で彼の心だけでなく距離感も表現しているのだ。この後も印象的な演出が施されいた。入る隙がないと諦めた有馬は二人に会うことなく去っていく。この場面で廊下にいる二人は日があたっているのに対し、有馬のいる階段は木陰で暗くなっている。こうした光と影による対象的な演出は今でも強く印象に残っている。
『マニアックな台詞』
ACT6.0で有馬とのデートに浮かれる宮沢が嬉しさのあまり不気味に笑うんだけど、そこで明らかに「ガンダム」を意識していたのが妙に可笑しかった。「ドムムム」や「ゲルググ」なんて笑い方はないと思いつつも結構好きだったりする。
『BGMについて』
音による演出も最高なんけど、曲そのものもレベルが高い。そう思ってサントラCDを聞いてみると、改めて素晴らしい曲がたくさんあるなと思った。
どの曲も好きなんだけど、有馬をめぐって宮沢と『浅葉秀明』が喧嘩する時に流れる曲が一番印象に残っている。まるで「ルパン3世」のテーマソングを思わせるような軽快なジャズロックというのがたまらなくいい。もう一つ挙げるとしたら、合宿後のデートで再び宮沢が有馬に告白しようとするものの、恥ずかしくて言えなくなるうちに気まずくなるシーンで流れる曲だろう。甲高いピアノを中心に重苦しいギターが混ぜることで差し迫った状況を表現している。
『メリハリのある色彩』
透明感のある美しい色合いは見ていて非常に心地いい。それだけでなく、明るい場面では蛍光色を多用し、夜になるとブルー系を加えた暗がりを演出、そして暗い場面ではセピア調と状況に応じた配色をしている。また、室内で使われるライト系の淡い色彩には暖かみが感じられる。などなど、色彩に関しても高度なセンスを感じた。
『結論』
宮沢や彼女の家族を中心としたドタバタやほのぼのとした会話は面白いし、有馬の中にくすぶる暗い感情の表現も見事だ。加えて演出面が非常に優れているので、理屈抜きに楽しめる作品になっていると思う。
【今回見たアニメ】
タイトル | 媒体 |
発売元 | 発売年度 |
彼氏彼女の事情 op.1〜6 |
DVDビデオ | キングレコード |
1999年 (op.1) |
【参考資料】
『CD』
タイトル (ACT〜) | 発売元 |
発売年度 |
彼氏彼女の事情
(ACT1.0〜3.0)
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キング レコード | 1998年 (ACT1.0)
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ルパン3世 ベストコレクション
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日本 コロンビア | 不明 |
『コミック』
タイトル | 作者 |
出版社 | 出版年度 |
彼氏彼女の事情 1〜10巻 |
津田雅美 |
白泉社 | 1996年 (1巻) |
『本』
タイトル | 作者 |
出版社 | 出版年度 |
色彩と心理おもしろ辞典 |
松岡 武 |
三笠書房 | 1994年 |