魔法天使ミサキ
2003年8月22日作成
最終更新日 2003年9月2日

『はじめに』

 多少の誤字脱字はあるものの致命的なバグはなかったし、メーカーからも発表されてない(2003年9月2日現在)ので、修正ファイルは当てないで始めている。

『よもや』

 事前にメーカーのホームで確認した内容では魔法少女があられもない姿で嬲られまくることに特化した作品だと思っていた。実際その手のシチュエーションもしっかりとあるのだけど、それ以上にシナリオが想像を遥に超えたレベルできちんと描かれていたことに衝撃を受けた。
 そもそも桜庭美咲が登場していくつかの台詞を見たときから良い意味で「おやっ」と思っていた。それからも、丁寧に伏線を張ることでヒロインがデスパイアの手に落ちる展開に感じる確かな手応えや、初めて陵辱されて深く傷つくヒロインの内面のみならず、そこから再び悪に立ち向かっていくまでの過程を余すことなく描いていることにいたく感心させられた。



【一通り終えて】

『最大の長所』

 「無意味な会話というものを潔く排除することで、テンポの良さを徹底的に追求されていたこと」が「魔法天使ミサキ」最大の長所といえよう。魔法少女ものに限らず、シナリオ重視の作品で描かれる日常会話は必要不可欠とはいえ、度を越した分量になると煩わしいだけである。さらに酷いと「どうでもいいようなことについて、いつまでもウダウダと喋ってばかりで、なかなか進展しない」シナリオもあって、その度にイライラを爆発させられた作品もあった。
 その点「魔法天使ミサキ」で使われる日常会話は次の展開に繋がる話のきっかけ作りに過ぎないので安心だった。さらに、一通りの話、および説明をして区切りがついたなと思ったら、大胆にも次の場面に切り替えるというテンポの良さにある意味感動してしまった。このように話の要点を適切な分量で的確に説明し終わると、すぐさま次の場面に移るという理想的なテンポのシナリオに惚れこんでしまった。

『徹底された設定』

 密度の濃いシナリオの背景には徹底された登場人物の設定があったことも忘れてはならない。特にエンジェルに変身する3人のヒロインにはっきりとした主義趣向というものがあって、それを頑なに貫かせた姿勢は見習うべきものがある。
 細かいところでも魔法の有効範囲や変身能力(コスチュームに身を纏っただけで何故正体がばれないのか)などの些細な設定についてもさり気なく指摘していることに何度となく感嘆させられた。これは警察やマスコミの反応や、一般の愚民(この作品では敢えてそう呼びたい)どもといった周囲の人間模様に関しても同様で、それらを上手い具合に挿入することで事件の悲惨さというものを、より一層引き立たせることに成功している。

『システム』

 音声再生付きの文章履歴がロードした直後でも残っているのは何かと便利だった。あとは、大まかな変更しかできないものの、環境設定は一通り揃っている。

『声優について』

 麻生要、守里の姉妹がなかなかの演技で頑張っていた。要は何よりも妹の守里を第一に一生懸命頑張りすぎてしまうところを、妹の守里は要の足手まといになるまいと健気に振舞う感じを、それぞれ上手く演じていた。守里の声優は他に沙羅と夏見もやっていて、このうち脇役である夏見に関しては、親友の美咲をからかういたずらっぽい性格がよく出ていた。それに対して沙羅はというと、内気な性格の時こそ良かったのだけど、あるシナリオで大きく変貌してからの演技はもう一歩という感じだった。そして、本作の主役である桜庭美咲はどいうかというと、もう少し頑張って活発な元気娘という役柄を演じてほしかった。最後に、事件の鍵を握るミントなんだけど、感情の起伏というものがあまり感じられずイマイチだった。

『今後の要望』

 地味ながらも魔法少女ものとして隙のないシナリオが拝めただけでも十分満足はしている。しかし、今後シリーズものとして続編を出す(美咲ハッピーエンドでその可能性を匂わせていた)のであれば、気になる点もいくつかあった。その最たるものが魅力に乏しいキャラのデザインである。男のデッサンが軒並み壊滅的であったのは仕方ないとしても、女の容貌(中でも沙羅は酷かった)はもうちょっとなんとかしてほしかった。出来れば別の人に頼めればいいのだろうけど、それが無理ならば、現在イラストを担当している方にスキルアップしてもらうより他ない。
 見た目の改善も急務だが、最初にベタ褒めしていた設定にしても、何かしらインパクトというかユーザーを惹きつけてやまない魅力不足も可能ならば解消してほしい。とはいえ、ゴスロリファッションを身に纏った義理の妹が義兄に「おにいちゃん大好き!!」なんて連呼するような媚びた設定がいいかというと、こと「魔法天使ミサキ」の場合はなんだかそぐわない気もする。それに、無理して理想を求めるあまりシナリオの方が疎かになってしまっては本末転倒であろう。それならば、せめてメインとなるべきヒロインだけでも人を魅了するチャームポイントなんかがあると良かったのかなあ、なんて思ったりするのだけどどうだろう。

『最後に』

 魔法少女、特撮ヒーローに強い思い入れがあるならば、作品から滲み出る味わい深さに共鳴することができるであろう。確かに見た目の印象の悪さは拭えないが、それだけで回避してしまうにはあまりにも惜しい作品ではないかと思う。



【今回プレイした作品】
タイトルメーカー 対応機種発売年度
魔法天使ミサキRaSeN win98/Me/2000/XP2003年