各地から猛暑の便りが届いてくる。2週間ぶりで現地に来た。夏草が生い
茂って途中から路は判らなくなった。モノレールの敷地跡に沿った踏み跡
らしき路を辿る。人の背丈を越す程に伸びたタケニグサやヨウシュヤマゴ
ボウが、作業も終わり人も通わなくなったのに、踏み倒されている。流れ
る汗を拭おうと立ち止まり、前方に目をやると黒っぽいカモシカの姿が目
に入ってきた。何しにきたんだ、という様子で此方を見下ろしている。身体
の大きな成獣、急斜面の上から見下ろされると、攻守逆転で威圧感を覚
える。一瞬の戸惑いの跡、カメラを取り出しシャッターを切った。遠く足場
が悪いので更に近づこうと2,3歩踏み出すとゆっくりと向きを変えて草薮の
中に消えていった。後を追って彼の立っていた位置に立つと獣くさい臭い
が強く残っていた。彼の去ったほうに目をやると、窪地を越えて広葉樹林
の中に消えていった。
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夏草は、人の背を超えるほどに伸び
た。草を踏み倒した路形、カモシカ路
に迷い込んだようだ。 |
カモシカは、好奇心の強い動物だ。
じっと停まって此方の動きに注意し
ている。威圧するように |
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しばらくの見合いの後、そろそろ行
くとするか、と立ち去った。 |
草薮を抜けて、広葉樹林の中へ姿を
消していった。 |