『平家物語』(全四巻) 山下宏明・梶原正昭校注(岩波文庫)

 本サイトの作成に当たっては、基本的にこのテキストを使いました。底本は覚一本(東京大学国語研究室蔵本)が用いられています。注がしつこいくらい豊富で、漢字も読みやすいように改められており、古文が苦手な人にとっても読みやすいと思います。また、各巻の巻末には系図や武具の解説、主要人物一覧などが掲載されています。初めての人にお薦めしたいです。

面白度 ☆☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆
役立度 ☆☆☆☆☆
推薦度 ★★★★★

1999年
定価各800円

『平家物語』(上・下巻) 佐藤謙三校注(角川ソフィア文庫)

 底本は流布本の一つ、寛文十二年(1672年)刊の平仮名整版本。註は脚註で見やすいのですが、いかんせん註釈が少なく、また本文の漢字も旧字体のままでちょっととっつきにくいかも。一通りの筋がわかっていれば大丈夫ですが(もちろん古文の読める方は大丈夫でしょう)。ただ、二冊におさまっているのでコンパクトですし、岩波版とは表現が違うところもあって興味深いです。

面白度 ☆☆☆☆☆
平易度 ☆☆
役立度 ☆☆☆☆
推薦度 ★★★

1959年
定価各660円

『保元物語』 岸谷誠一校注(岩波文庫)

 物語のメインは、為義を中心とする源氏一門の悲劇と為朝の武勇潭。平家を知るためにサブ的に読むことをお薦めしたい本ですが、当文庫は注釈がないので古典が苦手な人には奨めづらいところはあります。ただ、平家物語では源氏方として登場する武士たちの若かりし日の姿もかいま見られ、また平家方では清盛次男・基盛が活躍するなど、平家物語の番外編(と勝手に位置づけている)としても楽しめます。

面白度 ☆☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆
役立度 ☆☆☆☆
推薦度 ★★★★★

1934年
定価400円

『平治物語』 岸谷誠一校注(岩波文庫)

 保元物語の姉妹本。いわずと知れた平家一門繁栄の端緒となった合戦物語。ただ、こちらも物語の中心は敗れた義朝一行と義朝の愛妾・常盤御前の悲劇です。為朝に代わる英雄は義朝長男の悪源太義平。待賢門での重盛との一騎打ちは名場面として知られています。保元物語同様、こちらも注釈がないのが痛いところ。もっとも、両書ともそれほど難解ではないので、やはり手にとってほしいですね

面白度 ☆☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆
役立度 ☆☆☆☆
推薦度 ★★★★★

1934年
定価400円

『建礼門院右京大夫集 付 平家公達草紙』 久松潜一・久保田淳校注(岩波文庫)

 藤原伊行の女で建礼門院に仕えた右京大夫の歌集。右京大夫は重盛次男・資盛の恋人で、忠度や重衡、宗盛といった平家の公達との贈答歌も多く所収されています。何といっても当時を生きた人の生の声ですからリアルさは格別です。また、平家公達の華やかな貴族ぶりが描かれている「平家公達草紙」が併録されているのがうれしいです。

面白度 ☆☆
平易度 ☆
役立度 ☆☆☆☆
推薦度 ★★★

1978年
定価570円

『方丈記』 梁瀬一雄訳注(角川ソフィア文庫)

 言わずと知れた鴨長明の傑作随筆。本書が伝える五大災厄(安元の大火、治承の辻風、同福原遷都、養和の飢饉、元暦の大地震)は「平家物語」にも描かれており、「平家」の研究資料としても重要。底本は諸本の中で最も古い形態を伝える広本系統の大福光寺本。異本テキストが二種類併録されているほか、難解な漢文資料もふんだんに載っているなど参考資料は豊富ですが、中でも現代語訳があるのは嬉しいところ。注釈も豊富なので古文が苦手な方にもお勧めです。

面白度 ☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆
役立度 ☆☆☆☆☆
推薦度 ★★★★★

1967年
定価480円

『愚管抄』 丸山二郎校注(岩波文庫)

 九条兼実の弟で天台座主を四度務めた慈円が、後鳥羽院の倒幕計画を阻止するために記したとされる歴史書。神武天皇から順徳天皇に至る年代記ですが、記述の中心は言うまでもなく慈円の生きた平安後期から鎌倉初期で、特に著者が「武者の世」の始まりと位置づけた保元の乱以降の記述は、源平争乱の時代を探る貴重な史料となっています。平治の乱における清盛の雄姿や、二条天皇と後白河上皇との対立の中で「アナタコナタ」する清盛、さらに「殿下乗合事件」の真相など、平家物語の裏側に潜む歴史の断片をかいま見ることができます。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆
役立度 ☆☆☆☆☆
推薦度 ★★★★★

1988年
定価550円(9刷)

『吾妻鏡』(全五巻) 龍肅訳註(岩波文庫)

 治承四年四月の源頼政の挙兵から、文永三年七月の初の宮将軍・宗尊親王の入洛までの八十七年間を記した鎌倉幕府前半期の歴史書。原本は五十二巻で、どの諸本も共通して、寿永二年、建久七~九年など、延べ十年ほどが欠けています。原文は準漢文体ですが、本書は国史大系本を底本に、寛永版の訓読を参照して仮名交じり文にしてあります。ただ、注釈もなく、人の名前も官職名で表されることが多いので(羽林=維盛、廷尉=義経、武衛=頼朝など)、基礎知識がないとちんぷんかんぷんになるかも(管理人も半分は“ちんぷん”でした。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆
役立度 ☆☆☆☆
推薦度 ★★★★

1988年
定価350~550円(3刷)

『現代語訳 吾妻鏡』(全16巻〈未刊を含む〉) 五味文彦・本郷和人編(吉川弘文館)

 『吾妻鏡』の待望の現代語訳版。訳も読みやすいうえ、章ごとに人物や地名などの細かい注釈がついていてとても便利。干支表や時刻・方向表、旧国名地図、源平系図など、基礎資料も豊富で資料集としても活用できます。中でも、読み応えがあるのは巻2の「平氏滅亡」。義仲討伐から平氏滅亡、義経都落ちまで、源平合戦の名場面がスリリングに展開していきます。さらに、人名索引などが付いていたらありがたいのですが。

面白度 ☆☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆
役立度 ☆☆☆☆☆
推薦度 ★★★★★

2007年~
定価2,200円

『今鏡』(上中下巻) 竹鼻績訳註(講談社学術文庫)

 『大鏡』のあとを受けて、後一条天皇の万寿二年(1025年)から高倉天皇の嘉応二年(1170年)にいたる13代、136年間の歴史を紀伝体で記した歴史書。『大鏡』と異なり、政治的な事件にはほとんど描れず、その筆はもっぱら宮廷貴族社会における儀式や詩歌管弦の宴などに費やされています。平氏については、栄華のさまや建春門院のことが触れられるほか、正盛や忠盛と祇園女御との関係など興味深い記事もあますが、本書の性格から史実として取り扱うには注意が必要なようです。本書は、原文に加え、現代語訳や個々の語句の注釈まで詳細に加えられているので初心者でも安心して手に取ることができます。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆☆☆
役立度 ☆☆☆
推薦度 ★★

1984年
定価1,600円~

『十訓抄』 永積安明校訂(岩波文庫)

 鎌倉時代中期に成立した少年のための教訓書。具体的・実際的な処世訓を示すために、説話集の体裁をとっていますが、ときに説話自体の面白さに引きずられて教訓がおざなりになるのは、校訂者も指摘するところ。平氏にかかわる記事は、重盛の周到な心掛けや忠度の優なることを賞賛する逸話などがありますが、白眉は何といっても「清盛礼賛記事」でしょう。侍たちに対する暖かい配慮や細やかな気遣いに関する逸話は、清盛の度量の大きさをあますところなく伝えてくれています。「あとがき」で、同書の啓蒙意識が「かえって他の作品が発見し得なかった真実の側面を照らし出した」として、清盛の逸話を例示しているのもファンとしてはうれしい限りです。

面白度 ☆☆☆☆
平易度 ☆☆
役立度 ☆☆☆☆☆
推薦度 ★★★★★

1942年
定価700円(4刷)

『古事談』 志村有弘訳(教育社)

 鎌倉時代初期の成立といわれる説話集で編者は刑部卿源顕兼。上古から平安時代までの天皇、貴族、武士、僧侶にまつわる秘話・怪事が多数収められています。必見は、高野山の大塔修築を仰せつかった清盛のもとに不思議な老僧が現れ、厳島神社に奉仕すべきことを告げるエピソード。『平家物語』巻三の「大塔建立」に同様の話が見えるほか、「平家納経」に付随する清盛自筆の願文にも似たような記述があり、あながち創作とも言い切れないようです。原文は漢文仮名交じりですが、本書は現代語訳のみ。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
役立度 ☆☆
推薦度 ★★

1980年
定価700円(1刷)

『梁塵秘抄口伝集』 馬場光子全注訳(講談社学術文庫)

 平安時代の流行歌である「今様」に生涯をかけて打ち込んだ後白河法皇による歌謡集『梁塵秘抄』。その中で、本書は院の今様修練や今様の歴史、師の乙前との交流などを記した「口伝集」の現存部分(巻第一の断簡と巻十)の全文と現代語訳を掲載。若い頃は昼も夜も歌いあかして喉をからし、今様を極めてからは「後白河院流」を継承する者のないことを嘆く。真摯に、謙虚に今様に取り組む姿は、平家や義仲、義経を手玉にとり、「日本一の大天狗」と揶揄された政界の黒幕とは思えない魅力に富んでいます。後白河のスケールの大きさを示す貴重な史料。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆☆
役立度 ☆☆
推薦度 ★★★

2010年
定価1250円(1刷)



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