『日本中世の歴史3 源平の内乱と公武政権』 河合康著(吉川弘文館)

 日本中世の政治史に叙述のスポットを当てたシリーズの三冊目で、執筆範囲は平治の乱の直後から執権・北条時頼の治世までの九十年間。『源平合戦の虚像を剝ぐ』で“平家物語史観”に疑義を唱えた河合康氏らしく、本書でも多くの史家がかねてより疑問を呈してきた鹿ケ谷事件の史実性を明確に否定するなど、最新の学説をふんだんに取り入れ、新鮮な平家政権像、治承・寿永の内乱像を提示しています。また、中世武士社会のネットワークの重要性を論じた点も新鮮。鎌倉幕府の歴史的位置づけや中世国家の在り方に関する最新動向を概観するには格好の一書です。

面白度 ☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆
役立度 ☆☆☆☆
推薦度 ★★★★

2009年
定価2,600円

『戦争の日本史6 源平の争乱』 上杉和彦著(吉川弘文館)

 日本の戦争史・軍事史に焦点をあてた異色の通史の源平合戦版。叙述範囲は主に以仁王の挙兵から源義経の奥州への逃亡まで。合戦の経過自体はオーソドックスですが、源平争乱の歴史的意義を「朝敵追討」を大義名分として行われる日本の「戦争のかたち」を定めた戦いと評価している点は賛否両論ありあそう。『平家物語』を典拠とする部分が多いのは、一級史料の少ない分野であるため仕方ないと思いますが、各記述の出典が明記されていないところは難点。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆☆
役立度 ☆☆☆
推薦度 ★★★

2007年
定価2,500円

『日本の中世8 院政と平氏、鎌倉政権』 上横手雅敬・元木泰雄・勝山清次共著(中央公論新社)

 中世だけで10册以上あるというシリーズのうちの一つ。扱う対象が中世のみだからでしょうか、本書では院政の開始から鎌倉幕府五代執権・北条時頼の治世までという、変則的な時代区分になっています。ページ数がある割には駆け足の解説だな、と思って読んでいると、後半1/3は丸々荘園の解説に費やされていて、ちょっと疲れます。野心的な元木氏の論(院政の開始から鎌倉幕府の成立まで)と、肩ひじの張らない上横手氏の文章(幕府草創期から執権政治の確立まで)との温度差がなんとも妙。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆☆
役立度 ☆☆☆
推薦度 ★★★★

2002年
定価2,700円

『日本の歴史7 武士の成長と院政』 下向井龍彦著(講談社)

 武士が出現し政権を獲得するまでの過程を、国家の軍事力編成の視点から描いた意欲作。武士の誕生の謎に迫るべく、武士発生以前の7世紀の国家軍制から筆を起こし、鎌倉幕府樹立で幕を閉じる、日本通史の一冊とは思えない広範な時代をカバー。「貴族対武士」という明解なイデオロギーは影をひそめ、武士は「武装した農民」ではなく「戦闘を職能とする戦士」として位置付けられているところも近年の学説を反映していて心強い。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆
役立度 ☆☆☆
推薦度 ★★★

2001年
定価各2,200円

『体系日本の歴史5 鎌倉と京』 五味文彦著(小学館ライブラリー)

 『人物叢書 平清盛』の著者による日本通史の一冊。対象とする時代は、保元の乱から鎌倉幕府の滅亡までという長大な範囲をカバーしています。そのため、治承・寿永の内乱に関する叙述はそれほど豊富ではありませんが、地方の荘園を通してみる農村社会の風景や農民の動向にも言及し、中央の政治史だけでは語りきれない中世社会の実相に迫っています。武家政権の成立と展開を概観したい人にはお薦めです。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆☆
役立度 ☆☆☆
推薦度 ★★★

1992年
定価980円

『日本の歴史6 武士の登場』 竹内理三著(中公文庫)

 日本通史の名シリーズの復刊版。平忠常の乱から平氏滅亡までの160年間の歴史の中で、新興勢力である武士が摂関期、院政期を経て政治的に自立していく過程を描きます。本書で描かれた、古代的な公家勢力と革新的な武家との対立という図式は、その後の中世史研究の進展に伴い、かなり修正が必要なよう。ただし、改版に付された解説がある程度補ってくれているのでご安心を。取っつきやすいので、事実関係を整理したい方にはおすすめです。

面白度 ☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆
役立度 ☆☆☆
推薦度 ★★★

1973年
定価1,238円(改版)

『日本の歴史7 院政と平氏』 安田元久著(小学館)

 院政の展開の中で、武士が中央政界の中で台頭していく過程を描いた力作。白河院政から平氏政権に至る、この時代の政治の特質を「専制政治体制の時代」と位置付け、次々と希代のデスポットが出現した時代背景や歴史的必然性を分かりやすく解き明かしていきます。付録の小冊子として付けられた筆者と上横手雅敬氏、杉本苑子氏との座談会「清盛をめぐって」も必読です。

面白度 ☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆
役立度 ☆☆
推薦度 ★★

1974年
定価1750円(7刷)

『人物日本の女性史3 源平争乱期の女性』 円地文子監修(集英社)

 慣習・著者・編集委員とも、すべて女性の手だけによる日本女性史シリーズの一冊。第3段にあたる本書では、祇園女御、建礼門院徳子、祇王・小督・大納言典侍、巴御前、北条政子、静御前など、源平期を彩った女性たちを各一編ずつに分けて紹介しています。中世の幕開け期にあたる源平時代を生き抜いた女性たちの個性溢れる生き様は、個の目覚めと同時に、自分の身を守るためにしたたかに生きていかなければならない時代の厳しさを感じさせます。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
役立度 ☆☆
推薦度 ★★

1977年
定価890円(1刷)


『平家物語の女たち 大力・尼・白拍』 細川涼一著(講談社現代新書)

 平家物語に登場する女性たちについて、そのイメージが後世どのように人々に享受され、そして変貌・増幅していったかを、歴史学あるいは民俗学的なアプローチによって解き明かした意欲作。最終章で、経正を題材として、仁和寺御室と稚児男色の関係について論じた部分は異色といえます。各章の最後に平家物語で該当する部分の原文と訳文を載せていますが、「尼の行方」と題した章では長門本の「髑髏尼事」が読めます。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆☆
役立度 ☆☆☆
推薦度 ★★

1998年
定価640円

『平家伝説』 松永伍一著(中公新書)

 全国各地に残る平家伝説の醸成過程を民俗学的アプローチから再考し、平家落人部落の実態を明らかにしようとする意欲作。「平家部落と呼ばれるところが、確実な裏づけをどこも持っていない」ことを前提として、平家の子孫を名乗るようになった山間の人々の心性を暴いていく過程は、やや酷な気もしますが、平家部落であることが「鮎の塩焼き程度の観光的味覚にすり替えられている現実」を憂う著者のスタンスに共感できることも確か。

面白度 ☆
平易度 ☆☆
役立度 ☆
推薦度 ★

1973年
定価340円(1刷)

『安徳じゃが浮かびたい 安徳天皇の四国潜幸秘史』 細川幹夫著(麗澤大学出版)

 教育社会学を専門とする著者が、郷土の高知県に伝わる安徳天皇の潜幸伝説を取材した意欲作。壇ノ浦の合戦で入水したのは替え玉で、安徳天皇は屋島の合戦後、四国の山中に潜幸したとする伝説を、フィールドワークと史料考証によって解き明かしていく。ただ、歴史学として読むにはちょっと難があるかな、というのが正直な感想。むしろ最終章あたりに出てくる「お告げ」的なエピソードの方が面白く読めました。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆☆
役立度 ☆
推薦度 ★★

2004年
定価1,800円

『伊勢平氏の系譜 伝説とロマン』 横山高治著(創元社)

 伊勢出身の著者による、思い入れ一杯の平家解説。歴史というか、民俗学というか、単なるエッセイというか、何ともカテゴライズしづらい本ではあります。話題は主に、伊勢に落ち延びた平氏のその後など、伝説に取材したものが多いです。特に、平家一門では維盛が多いほか、時には平家の末裔といわれている織田信長や本居宣長などにも筆が及びます。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆
役立度 ☆☆
推薦度 ★

1985年
定価各1,400円


人物叢書『後白河上皇』 安田元久著(吉川弘文館)

 後白河の生きた時代は、まさに源平争乱の時代と重なっています。清盛、義仲、頼朝はすべてこの「日本一の大天狗」に翻弄され、過酷な政治闘争に明け暮れました。後白河はこの時代の陰の主役であり、後白河の生涯を見ることでこの時代のすべてがわかるといっても過言ではなく、その意味で本書の講読をオススメします。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆
役立度 ☆☆☆☆
推薦度 ★★★

1986年
定価1,700円

『後白河法皇』 棚橋光男著(講談社選書メチエ)

 「初めての本格的な評伝」(本書「プロローグ」より)となるはずだった本書は、肝心の著者が志なかばで他界したことにより、未完となってしまいました。というわけで本書は著者の遺稿集。後白河の精神史の内面的分析、文化創造の場「京都」の持つ政治性について述べられた短い「後白河論」のほか、「中世国家の成立」「参天台五台山記」に関する論文を所収。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆
役立度 ☆☆
推薦度 ★★

1995年
定価1,500円

『後白河天皇』 赤木志津子著(秋田書店)

 後白河天皇に関する詳細な伝記。「天皇紀シリーズ」という一連のシリーズがあるらしく(初版本で1949年に出版されているのでよくわからない)、その第三番目が本書。後白河生涯を述べた後、わざわざ最終章で後白河の人間像をあらためて取り上げているところは、“怪物”後白河の特異性をあらわしているようでユニーク。

面白度 ☆
平易度 ☆☆
役立度 ☆☆
推薦度 ★

1974年
定価上1,340円

日本史リブレット24『後白河上皇』 遠藤基郎著(山川出版社)

 後白河上皇の65年の生涯をコンパクトにまとめた伝記。単に時系列で事件を追わず、人となりや趣味、政治、人脈、功績などさまざまな角度から考察を加える方法で、後白河の多面性を浮き彫りにしています。功罪を踏まえた客観的な記述にも好感が持てます。人間として、政治家として後白河を知るには格好の書といえるでしょう。

面白度 ☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆
役立度 ☆☆☆☆
推薦度 ★★★★

2011年
定価上800円


歴史群像シリーズ特別編集『図説・源平合戦人物伝』 (学研)

 源平両氏のみならず、貴族や僧侶、白拍子まで総勢186名におよぶ人物辞典。オールカラーで驚くほど多くの図版を掲載し、見ていて飽きることがありません。時代の流れに即して人物を配列する構成になっており、冒頭から読み進めていけば、源平盛衰の様もつかめるようになっています。惜しいのは、個々の掲載記事の多くが、人物辞典というより「平家物語エピソード辞典」のようになっていること。史実に即した記述を期待していただけに、その点は残念でした。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
役立度 ☆☆
推薦度 ★★★

2004年
定価1,900円

別冊歴史読本『総集編 源平人物ものしり百科』 (新人物往来社)

 源平期の武士や貴族、僧侶や女性はもちろん、仏師や刀鍛冶、甲冑工、医師、白拍子など職人・芸人まで網羅した充実の人物辞典。さらに、諸氏の系図や家門、庶流の系譜、合戦史、基本史料一覧なども豊富に採録し、多角的に同時代の世相を浮き彫りにしています。論考を寄せる識者もそうそうたる顔ぶれで、読み応え十分、活用度大の良書です。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆☆☆
役立度 ☆☆☆☆☆
推薦度 ★★★★

1994年
定価1,800円



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