吉川英治歴史時代文庫『新・平家物語』(全16巻) 吉川英治著(講談社)

 言わずと知れた吉川英治の大河歴史小説の傑作。私はこれで平家にはまりました。青年時代の清盛が貧乏だったり、清盛の母が祇園女御だったり、重盛の母が時子だったりとよくわからない脚色が多いですが、阿部麻鳥や朱鼻の伴卜など個性的な創作人物が登場して、単なる歴史ドラマに終わっていないところは、さすが小説家はエライなあ、などと思ってしまいます。

面白度 ☆☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆☆☆☆☆
推薦度 ★★★★★

1989年
定価各699円

『平家物語』(全三巻) 森村誠一著(小学館文庫)

 『悪魔の飽食』でお馴染みの著者による長篇大河小説。「『平家物語』が現代において新たな生命となって復活、躍動することを期し」たというだけあって、「古典平家」的イデオロギーが充満。すなわち清盛は「猛き者」であり、重盛は聖人君子という図式になっています(NHKの「その時歴史が動いた」ではあんなにべた褒めしていたのに)。せっかく「平家物語の移植を現代に試み」るなら新鮮な清盛像を提示してほしかったという点で少し残念。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆☆
推薦度 ★★★

2000年
定価各1,200円

『女人平家』(上・中・下巻) 吉屋信子著(朝日文庫)

 『鼻物語』『鬼火』などで有名な女流作家の最後の長編小説。「女人」というだけに、時子を始め平家の姫君たちが物語の主役。徹底しているのは、平家都落ち後も京に残された冷泉隆房や七条信隆の北の方など、平家の姫君たちの視点で物語が描かれている点です。女系によって平家の血脈を後代に伝えた、彼女たちの懸命な生き様は、男性中心の歴史観に対する痛烈な批判ともなっています。大江広元と冷泉北の方の恋、広元と三善康信の友情、七条北の方と継子・坊門信清の心の交流など、あまり光が当てられない文官貴族をフィーチャーしている点も特徴的。

面白度 ☆☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆☆
推薦度 ★★★★★

1984年
定価330~350円(5刷)

『宮尾本 平家物語』(全四巻) 宮尾登美子著(朝日新聞社)

 2005年NHK大河ドラマ「義経」の原作。なぜ原作が「平家物語」でドラマの主人公が義経なのかはさておき、大河で治承・寿永の内乱を扱うのは嬉しい限りです。保元・平治の乱など重要な史実の推移は極力簡潔で、物語の骨格をなす程度。史実にはあらわれない登場人物の心の葛藤や交流などに力点が置かれているところは好感が持てます。

面白度 ☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆
入手度 ☆☆☆☆☆
推薦度 ★★★★

2001年
定価各2,200円

『平家』(上・中・下巻) 池宮彰一郎著(角川書店)

 日経新聞連載の大河小説。冒頭は平家躍進の端緒となった平治の乱から始まるのですが、この中途半端な冒頭設定が祟って、物語は背景の説明のために過去と現在を行ったり来たりで大忙しの態。内容は「改革者」清盛に対して、その政治刷新を阻もうとする「抵抗勢力」藤原官僚群という図式。いかにも現代の世相を反映しているところが新聞連載らしいですね。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆☆☆
入手度 ☆☆☆☆☆
推薦度 ★★

2003年
定価1,800円

『波のかたみ-清盛の妻』 永井路子著(中公文庫)

 タイトル通り、清盛の正妻時子を主人公とした小説。従って、ドラマは常に時子の視点で語られます。冒頭の保元の乱でも、夫を送り出した時子が北の方角に火の手があがるのを見て、夜襲が始まったことを知る、合戦のいきさつは凱旋した清盛の口から語られる、といった具合です。そうした小説的な視点が新鮮なうえに、綿密な史料検索による時代考証の確かさと、歴史学者ばりの鋭い歴史洞察があって、面白いやらタメになるやらで、読み終わるのがもったいないくらいでした。時子を中心としてこの時代を眺めると、“平家”ドラマの本当の主役は六波羅家ではなく、時子や時忠など高棟王流の堂上平氏だったのでは、と思わせられます。

面白度 ☆☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆☆☆
推薦度 ★★★★★

1989年
定価580円(1刷)

『櫻 平家夜話』 早瀬詠一郎著(PHP研究所)

 平家にまつわる十四話を収めた書き下ろし短編集。主人公は話ごとに入れ替わりますが、その顔ぶれは貴族の祐筆や天皇の侍従など御所勤めの人物や、馬具職人や船主、山法師など市井に生きる一般庶民。そんな下級官人や庶民の目を通して、祇王や小督の哀話、鹿ヶ谷事件、平家都落ちなどお馴染みのエピソードが展開していきます。一見世の中の動きとは無関係のような主人公の生活と、平家の繁栄・没落の様相が巧みに混ぜ合わされる構成は読んでいて飽きることがありません。平家物語の焼き直しに飽きた人にはおすすめの一書といえます。

面白度 ☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆
入手度 ☆☆
推薦度 ★★★★★

2004年
定価1,700円

『平家慕情』 中津文彦著(実業之日本社)

 平重衡を主人公にした異色長編小説。歴史の流れをしっかりと追いつつ、登場人物の造形にも不自然さがなく、読んでいてとても気持ちが良いです。思えば清盛を除いて、平家一門の中でこれほど小説の主人公に相応しい人物はいないでしょう。よくぞやってくれたという感じです。南都焼き討ちや一ノ谷での捕縛の場面も十分共感できるし、細やかな心情の描き振りは申し分無しです。欲をいえば、宇治川の橋合戦などのお馴染みのエピソードを、もっと重衡の視点から描いてくれたら推薦度5★は間違いなしですね。

面白度 ☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆
入手度 ☆☆☆
推薦度 ★★★★

1999年
定価1,800円

『子午線の祀り』 木下順二作(岩波文庫)

 木下順二の名作戯曲。平家方は知盛、源氏方は義経を主人公として、一ノ谷の合戦終了直後から、壇ノ浦の合戦までを描いています。「運命を予見しながら、それにあらがい続けた知盛」という設定は、石母田正氏の名著『平家物語』の構想を引き継いだものでしょう。珍しく重要な役どころを与えられた阿波民部重能が、ことあるごとに知盛と対立している構図が、物語をぴりっと引き締めています。他に『龍が見える時』『沖縄』の二編を収録。

面白度 ☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆
入手度 ☆☆☆☆
推薦度 ★★★★

1999年
定価600円


『平清盛』 村上元三著(徳間文庫)

 ここまで史実と違っていると、もはやそれは創作の域ではなく、単なる作者の怠惰だとしか思えないのですが。人物造形にもあまり念が入っていないような気がします。死んだはずの人物が出てきたりもして…。

面白度 ☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆
推薦度 ★

1993年
定価660円(1刷)

『平清盛』 中村晃著(PHP文庫)

 清盛の小説を読むときに一番楽しみなのは、冒頭をどの時代に設定するか、ということなのですが、本書の場合は、祇園社の神人と清盛郎等との衝突に端を発した山門強訴から始まるというまずまずの出だし。その後は平々凡々ですが。ただ、清盛が馬になって義経を乗せて遊んでやるという、まんざらなさそうでもない演出は心憎いですね。

面白度 ☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆
推薦度 ★

2000年
定価648円

『清盛』 三田誠広著(集英社)

 芥川賞作家が清盛を描く、ということでかなり期待して読み始めたのですが…。清盛の前半生は弟・家盛との確執に主眼をおくという、ほかの小説にはあまり見られない描き方をしますが、これは『人物叢書 平清盛』の影響でしょうか。小説的な虚構よりも事実の探索に比重をおいたということですが、そういうことは学者に任せておきましょう。

面白度 ☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆☆
推薦度 ★

2000年
定価1,900円

『平清盛』 高野澄著(淡交社)

 清盛を主人公とする小説でありながら、歴史叙述のような客観性を併せ持つ作品。本書で描こうとしている清盛は、一言でいうと「猛き者」。それは、清盛を理解するためための必要なこととして「南都を焼き打ちした時の快感を共有できるか、どうか、この一点にかかっている」という叙述からも読み取ることができます。ここに共感できる人には、面白いと感じられる作品なのかもしれません。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆☆☆
入手度 ☆☆☆
推薦度 ★★

2005年
定価1,600円

『西行と清盛』 嵐山光三郎著(学陽書房)

 不世出の歌僧・西行の人生を軸に、清盛が絡むという異色作。タイトルで二人が並記されているわりには清盛はあまり出てこない、というか清盛の内面まで踏み込んでいないところは少しがっかり。三人称の記述ですが、ほとんど西行の一元描写になっているからでしょう。とはいえ清盛の描き方は、吉川英治の『新・平家』に近い感じで、なかなか魅力的に書かれています。清盛と西行との関わりについては、清盛関連の書物にはあまり出てこないので、ちょっと盲点をつかれた感じです。新たな好奇心喚起してくれるという意味で収穫でした。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆☆
推薦度 ★★

1999年
定価700円(初版)

『平清盛』 柚木象吉著/(講談社火の鳥伝記文庫)

 少年向け伝記シリーズの一冊。おごりに満ちた独裁者として、子どもたちの「反面教師」にされているのではないかと心配して読み始めたのですが、それは杞憂に終わりました。「清盛こそあたらしい時代をうごかしていく人だったのです」というように、偉大さを正しく伝える一方、南都焼き打ちなど晩年の失政について言い訳がましいことを述べないところに、歴史を正しく伝えようとする姿勢が表れています。また、それほど多くないテキストの中に、武家政権の始まりや日宋貿易の推進など、清盛の業績を丁寧に記しているところに筆者のこだわりと力量の確かさがうかがえます。好著。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆
推薦度 ★★★★

1982年
定価490円(11刷)


吉川英治歴史時代文庫『随筆 新平家』 吉川英治著(講談社)

 『新・平家物語』の執筆と並行して書かれた随想や紀行文を一冊にまとめたもの。何しろ7年という長い年月をかけて完成をみた超大作ですから、このような副産物も生まれるのでしょう。著者の歴史観・人物観が率直に述べられていて『新・平家』の余韻を楽しむためには絶好の一冊です。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆☆☆☆
推薦度 ★★

1990年
定価699円

『平家物語の女性たち』 永井路子著(文春文庫)

 平家物語の登場する人物のうち、十余人の女性についてその生き方、描かれ方を綴った一書。小説家らしく、単に人物の生涯をたどるだけではなく、古典「平家」の人物造形についても批判を加えるなど、手放しで賛美しないところに好感を覚えます。また、史料に基づいた科学的な歴史解釈があるので歴史家的な視点からの批判にも信頼がおけるところが、そこらの小説家とはひと味違います。

面白度 ☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆☆☆☆☆
推薦度 ★★★★

1979年
定価448円(26刷)

古典を歩く7『「平家物語」を旅しよう』 永井路子著(講談社文庫)

 筆者が鎌倉、熊野、京都、厳島神社、屋島、壇ノ浦など平家物語ゆかりの地を訪ね、綴った紀行文。全体の構成は古典「平家」の中でもフィクショナルな部分の多い四人の人物、重盛、維盛、重衡、建礼門院に焦点を当てた内容になっています。筆者はここでも古典「平家」を手放しで賛美することなく、「平家」が語ろうとしたことを探ろうという鋭い視点が読みとれます。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆☆☆☆
推薦度 ★★

1998年
定価571円

『平家物語 無常を聴く』 杉本秀太郎著(講談社学術文庫)

 大佛次郎賞受賞のエッセイ。冒頭の祇園精舎から末尾の灌頂巻まで、一方流語り本系の平家物語(日本古典文学体系)を丹念になぞった構成で、著者の博識は史実から謡曲、故事、有職故実にまで及びます。ただ、一冊とおして読むと、平家物語全編を一から読まされているような感じで、少しぐったり。こうして人様の感想文に接するたびに、『平家』は扱いにくい古典だなあと、つくづく感じます。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆☆
入手度 ☆☆☆☆
推薦度 ★

2002年
定価1,300円

『古典を読む 平家物語』 木下順二著(岩波現代文庫)

 『子午線の祀り』でお馴染みの劇作家によるエッセイ。平家物語を「どうせ死んでいくはかない」存在である人間が、全力で生きていく様を描いた文学として捉え、「全力を尽くして生き」た幾人か(文覚、清盛、知盛など)の人物像を追究。時には史実との対比を通して、平家作者が描こうとした人物像に迫ります。気負いのない筆致、整理された文章がいかにも劇作家らしく、平家初心者にもオススメの一書です。

面白度 ☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆
入手度 ☆☆☆
推薦度 ★★★

2003年
定価900円

『新説・源平盛衰記』 八切止夫著(作品社)

 独特の「八切史観」によって、源平時代の謎に迫る意欲作……と書くと、もっともらしく聞こえますが、ほとんど悪い冗談としか思えない奇書です。源氏の「源」は蒙古の「元」に由来するだの、あげつらえばきりがないのですが、「歴史の常識を疑う」にしても、著者が論を展開する上で寄って立つ歴史認識自体に誤りがあるので、何とも説得力がない。救いなのは、解説者が作者の虚構を認めた上で、本書の存在意義を上手に説明しているところくらいでしょう。

面白度 ☆
平易度 ☆☆
入手度 ☆☆☆☆
推薦度 ★

2004年
定価2,400円

『五常楽 平家公達徒然』 井上嘉子著(シースペース)

 『平家公達草紙』『建礼門院右京大夫集』を主な素材として、平家の公達たちの素顔を活写した一書。『草紙』の魅力を伝えるべく、原文と口語訳を網羅し、合わせて『平家物語』や『たまきはる』などの周辺史料も活用、公達の素顔を立体的に浮き彫りにしている。『平家物語』からの抜粋が長すぎるなど、まだるっこしい部分もあるものの、知られざる公達の魅力を伝えようとする意欲にあふれた好著といえる。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆
入手度 ☆☆
推薦度 ★★★

2008年
定価1,000円


『平家納経の世界』 小松茂美著(中公文庫)

 三十年の歳月をかけて「平家納経の研究」を完成させた著者による平家納経成立のドラマ。清盛が平家納経を作製した背景には、保元の乱で敗死した崇徳の怨霊の影があった…。長寛二年(1164年)当時の出来事を詳細に検討し、平家納経制作の謎に迫ります。後半は著者独自の学問体系「古筆学」の体系化の道程をたどるエッセイですが、独学独修で平家納経の謎を追う著者の熱意に共感を覚える読者は多いのではないでしょうか。力を与えてくれる一書です。

面白度 ☆☆☆☆
平易度 ☆☆
入手度 ☆☆☆
推薦度 ★★★★

1995年
定価1,095円

『図説 平家納経』 小松茂美著(戎光祥出版)

 平家納経全三十二巻をオールカラーで紹介、華麗な平家文化の極致ともいえる国宝の魅力を余すところなく伝える入門書。各巻の見返しはもちろん、本文や軸までをカラー掲載し、絵画・書・工芸の粋を集めた国宝の魅力を垣間見ることができます。また、本書のもう一つの「売り」は、六十年以上にわたって平家納経の研究を続けてきた編著者小松茂美氏による解説。“はじめに”の末尾「著者六十年の一念をここに終焉させる」の文言に、同氏の意気込みがうかがえます。

面白度 ☆☆☆☆
平易度 ☆☆☆
入手度 ☆☆☆
推薦度 ★★★★

2005年
定価2,500円

『謡曲平家物語』 白州正子著(講談社文芸文庫)

 平家物語に題材をとった能についてのエッセイ。平家物語と謡曲の対比を通して「聞くものから見るものへ」変化した平家の世界を分かりやすく解説してくれます。本書では能の大成者である世阿弥を「もうひとりの主役」としてクローズアップしており、『申楽談儀』などから世阿弥の言葉を多数引用しているところに特徴があります。残念なのは他の「能の平家」本と違い、お能の写真が掲載されていないところ。その点では、下記二册に軍配が上がります。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆☆☆
推薦度 ★★★

1998年
定価1,050円

『平家物語の怪 能で読み解く源平盛衰記』 井沢元彦著(世界文化社)

 平家物語に関係する十二番の能について筆者が講演を行ったのをまとめたもの。各章は、テーマごとに歴史面からの解説を筆者が担当し、能についてはプロの能楽師が解説を加えています。かつ、全体は平家物語の進行に沿って構成されているので、この時代の流れ全体についても理解できるようになっています。平家を通じて、ふだん接する機会の少ない能の世界を知ることができる貴重な一書です。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆
推薦度 ★★

2004年
定価1,600円

『能の平家物語』 秦恒平・文/堀上謙・写真(朝日ソノラマ)

 とても美しい本です。装丁・ページデザインが上品で落ち着いているうえ、能の解説の前後にはふんだんに舞台の写真が挿入されていて、眺めているだけで「買って良かった」と思わせてくれます。平家物語を典拠とした二十番の能についてのエッセイと曲目解説が、ほぼ歴史経過の順に展開。エッセイはゴテゴテとした飾りのない、優しい文章で心が和みます。古本屋で購入したもなのですが、一般書店で買うのは難しいかも……。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
入手度 ☆
推薦度 ★★★★

1999年
定価3,200円

『江戸川柳で読む平家物語』 阿部達二著(文春親書)

 平家物語の登場人物を詠んだ川柳を集め、物語展開にあわせて紹介していくという珍本。何よりも驚かされるのは句の多さと一句一句の内容の深さ。江戸時代における平曲の流布といった歴史的な話は割愛されているので、一般庶民にとっての平家物語の存在価値がどれほどのものであったのかを伺い知ることはできませんが、メディアの発達した現代人以上に、江戸っ子が平家物語の内容に遙かに精通していたということに感心させられます。あとウィットも。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆
役立度 ☆☆
推薦度 ★★

2000年
定価710円


『日本史探訪6 源平の争乱』 角川書店編(角川文庫)

 NHK総合テレビの「日本史探訪」「新日本史探訪」をまとめたもの。作家の海音寺潮五郎、司馬遼太郎、大佛次郎をはじめ、劇作家の木下順二、評論家の唐木順三など綺羅星のごとき面々が清盛、知盛、頼朝、義経などについて語ります。それぞれの職業に立脚した歴史観・人物観は興味深いのですが、中には単なる雑談のようなものもあって、出来不出来にはムラが。ただ、瀬戸内水軍について述べた項だけは突出して内容が濃く、ここについては一読の価値はあります。

面白度 ☆☆☆
平易度 ☆☆☆☆☆
役立度 ☆
推薦度 ★★

1984年
定価560円(1刷)

『詠う平家 殺す源氏』 谷沢永一・渡部昇一著(ビジネス社)

 二人の識者による対談という、平家本にしては珍しい形式。平家物語が後世の日本人に与えた影響や平家物語成立の謎など様々な角度から、二人であーだこーだ言っています。平家物語を「日本人の心性と感性の基本」として位置づけるという、かなり肯定的な評価を前提としているのはいいのですが、「『平家物語』の謎という謎は、かなりの程度まで解決できたと思う」は言い過ぎでしょ。

面白度 ☆☆
平易度 ☆☆☆☆
役立度 ☆☆
推薦度 ★★

2002年
定価1,500円



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