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「どうだった?旅行」
京都から帰ってきた寛弥に、美樹が興味津々といった様子で尋ねた。
「よかったわよ」
寛弥のあっさりとした返答に、この店のバイトのかすみが不満そうに言う。
「それだけですか〜寛弥さん」
「だって、他に言いようがないもの」
かすみの様子に苦笑しながら、寛弥が答える。
本当に、他に言い様がないのだ。
「じゃぁ、プレゼントは何を貰ったんです?」
かすみがめげずに尋ねる。
どうやら、興味は他のところに移ったらしい。
「かすみちゃん、ちょっとお使いに行ってくれない?」
そんなかすみの様子を見て、美樹が言った。
「美樹さん・・・!」
かすみの抗議は、美樹の有無を言わせない口調に遮られる。
「かすみちゃん!」
「・・・はい。行って来ます」
かすみはしぶしぶ頷くと、店を後にした。
そんなかすみの様子を、美樹が苦笑しながら眺める。
「それで、吹っ切れたの?」
美樹の問いに、寛弥が驚いた顔をした。
何で知ってるの!?といった寛弥の表情を見て、美樹は微笑んだ。
「少し前にね、ちょっと小耳に挟んだのよ。三者会談」
美樹の言葉に、寛弥が納得したように頷いた。
この場合の三者とは、和斗と僚と海坊主の事だ。
「全部吹っ切れたっていうわけじゃないのよ」
「それはそうなんじゃない?そんな簡単に、心は割り切れないもの」
美樹の言葉に、寛弥が微笑んだ。
「でも、区切りはついた」
「保科さんも?」
その言葉に、寛弥が頷いた。
そして、ハンドバックから宝石のケースを取り出すと、中から指輪を取り出した。
「保科さんから?」
美樹は寛弥からその指輪を受取ると、寛弥に聞いた。
「リングの内側、見てみて」
寛弥に言われて、美樹が内側に彫られた文字を読む。
「H&K・・・?」
美樹の疑問に、振って沸いたように背後に現れた海坊主が答えた。
「広人と和斗から・・・か?」
「ファルコン!?」
美樹が驚いて振り返った。
そこには、何時帰ったのか留守だったはずの海坊主の姿があった。
「まさか、この指輪を何年も経ってから貰えるとは思わなかったから・・・正直驚いたわ」
寛弥は美樹から指輪を受取ると、大事そうにケースにしまった。
寛弥の言葉に、美樹が不思議そうな顔をした。
「この指輪ね・・・昔あたしが選んだの。広人の横でね」
寛弥はそういうと、優しく微笑んだ。
もういいのだと―――
そう言われたような気がしたからだ。この指輪を受取った時に・・・
もっとも、それはこの指輪を見つけた和斗も同じかもしれない。
「何はともあれ、おめでとう」
美樹の祝福の言葉に、寛弥は満面の笑みを浮かべた。