「妄想暴走欲望爆走話」
「おまーは……おれにどうしろって言うんだよ……。」
冴羽アパート6階リビングのソファーの上を撩は見る。
撩の視線の先にはしっかりと捕まれた自分の腕があり、その先には幸せそうに眠る彼のパートナーがいた。
撩は深いため息をついた。
ことのはじまりは、いつものこと。
今日もいつものようにツケで飲み歩き、帰ってくると草木も眠る時間をとっくに過ぎていた。
今日もハンマーかとびくびくしながら、そぉっと家にはいる。
が。
彼女の罵声も、ハンマーも、ましてやコンペイトウさえもとんでこなかった。
いや、そもそも、その彼女の気配さえしなかった。
一瞬、頭の中が白紙になる。
ここでパニックを起こせば可愛げもあるのだろうが、あいにく撩はそんな頭は持ち合わせていない。
室内には荒らされた形跡もないし、争った形跡もない。
彼のパートナーも成長したもので、そう簡単に捕まりはしない……いや、たまにドジを踏むが、それでも抵抗ぐらいする。
では、今日、香はなにか言っていたのだろうか。
どこかに出かけると言うことを撩が忘れているだけであろうか。
酔いが残る頭で考えてみる。
と、電話の音が響く。
とれば、今や茶店のマスターが板に付いた同業者からだった。
なんでも、香を引き取りに来いという。
ホッとした心に、自分が意外に焦っていたことを気づかされる。
それを電話の相手に気づかれるのが悔しいので、わざとらしく舌打ち、渋々承諾して「CAT'S EYE」に向かった。
そこで見たのは、珍しく酔いつぶれた香。
同じような思いをしている(美樹談)お向かいと、ここで飲んでいたらしい。
耳にいたい美樹の言葉を適当に受け流し、意味不明な言葉を呟く香を支えながら、家に帰る。
しかし、リビングで力つき、話は冒頭にかえるのだ。
「おーい、香。」
読んでみても、返事がない。
「ほーんと、気持ちよさそーに眠っちゃって。」
眠る香の顔を改めて観察する。
柔らかく、癖のある髪。
閉じられた瞼を縁取るのは長いまつげ。
酔いのためか薄紅色に上気する頬。
薄く開かれた唇はしっとりとサクランボ色。
ごくりと撩ののどが鳴る。
慌てて視線をおろすと、はだけた胸元から薄紅色のふくらみと、鎖骨のラインが目にはいる。
もう一度、撩ののどが鳴る。
やばいと視線を返せば、その唇に自ずと視線が吸い寄せられる。
(おいおいおい!こんな男女に何やってるんだ、おれは!!)
叱咤してみても、視線はそこから離れない。
「ん……。」
唇から甘い声が漏れる。
ぞくりとしたものが撩の中を走る。
いつの間にか、腕を掴んでいるのは香じゃなく、撩になっている。
撩は身を乗り出して、香を見下ろした。
(〜〜こいつもこいつだ!なんで酔っぱらってるのに寝るんだよ!!)
理不尽なことを心の中で喚くが、そんなこと、香の知ったことではない。
香は無防備に眠り、その寝顔に撩はめまいさえ起こしそうになる。
理性がけたたましい警鐘を鳴り響かせるが、本能は抗い続ける。
香に「起きろ」という声と「起きるな」という声が激しく戦いながらも、影はどんど
ん重なり始める。
甘そうな唇が、目前に迫る。
掴む手に、力がこもる。
警鐘は聞こえなくなり、替わりに心臓の音がやけに耳につく。
彼と彼女の距離が徐々に近づく。
その距離があと、指一つ分になった。
その時。
「ツヤ無しヘッドたわけドリーム505。」
一瞬にして、撩は崩れ落ちた。
香は、何事もなかったかのように眠り続ける。
「お……おまーはどんな夢を見てんだよ……。」
ソファーの下で、撩は小さくうめいた。
そして、のろのろと立ち上がると、小さく息を吐いた。
「このままじゃ……風邪、ひくよな。」
撩は香を抱き上げた。
一瞬表情をこわばらせると、急いで香を部屋に放り込み、また急いで自分の部屋に向かった。
腕に残る柔らかい感触と、先ほどの光景を思い浮かべ、撩は一人嘆息した。
「おれ、今日、眠れるかな……。」
END
*あとがき*
すみません。経済原論の時間に書いてました。
は、おいといて。
いや、ただ単に撩をいじめたかっただけです。
ほんとに。
バナナケーキにシロップと蜂蜜かけてます。
甘いです。
羅紗にはこれが限界です。
これ以上のものを書くと、発作を起こして吐血してしまいます。
今度は甘くなくて撩をいじめてみようと思います。
では。
*管理人談*
受信した瞬間、ぶち壊れました。いい意味で(笑)
僚の苦悩が目に浮かぶ。
これが始めて書かれたとは思えないくらい上手です。
次回作も期待していいのかな?