寝言にはご用心!?
槙村香の朝の最優先事項は、恋人兼同居人である冴羽僚を起こす事である。
(気持ちよさそうに寝てるわね・・・)
何時もの事とはいえ、香は僚の寝顔を見て思った。
「僚、起きて!朝よ!!」
とりあえず、声をかけて体を揺さぶってみるが効果は全く無い。
(・・・これで本当に、プロのスイーパーなのかしら?)
香の疑問など、お構いなしに幸せそうな寝顔である。
「ハンマーなら一発で起きるのに・・・」
香が悔しそうに呟く。
前は問答無用でハンマーだったのだが、僚の猛烈な抗議により、とりあえず最終兵器という扱いになっている。
いっその事、撃鉄でも起こそうかしら?という香の提案は、即座に周りの友人達から却下された。香にはあまり想像がつかないのだが、そうとう神経に悪いらしい。
「僚!ご飯よ!!」
香は僚の鼻を摘むと、再度声をかけた。
当然のごとく、起きる気配は全くない。
ついに堪忍袋の緒が切れて、香がハンマーを持ち出したその瞬間、僚が自分の名を呼んだ。
「・・・香・・・」
その声に、香が慌ててハンマーをしまう。
「・・・寝言?」
しかし、一向に目覚める気配の無い事から、香が呟いた。
「・・・すまない・・・」
その言葉に、香がドキッとする。
一体何の夢を見ているのだろうか?
香は起こす事をやめ、一心に僚の寝言に聞き入っている
こんな面白いことを止められるわけがない。
すると、突然僚が香の腰に抱きついた。
突然の出来事に、香の体が固まる。
「結婚してくれ〜」
その言葉を聞いた瞬間、香の顔はやかんのように真っ赤になり、湯気がたっている。
「頼むよ〜じゃないと、ぺこちゃんと結婚させられる〜」
今まで火照っていた顔が、急速に冷えていく。
(一体、どういう夢見てるんだ?こいつ・・・)
香は呆気にとられながら、またベッドに突っ伏して寝入っている僚の姿をマジマジと見た。
「・・・ぺこちゃんが迫ってくる・・・いやだ〜」
そう言っては、時折激しく魘されている。
香は溜まらず口元を覆うと、急いで階下に降りていった。
冴羽僚は、何時もとは違う違和感で目が覚めた。
ベッドサイドの時計に目をやる。
何時もなら、この時間は必ず香のハンマーで起こされる。
僚は暫く気配を探ってみたが、全く読み取れない。
「出かけてるのか?」
僚は大きく伸びをすると、身支度を整えて階下に降りていった。
「・・・何をしてるんだ?人ん家で・・・」
僚はリビングのソファーに座っている、床が抜けそうな程の巨体をした同業者に向かって言った。
一瞬、香の身に何かあったのかと思ったが、それならば速攻でたたき起こされるはずである。僚は、瞬時にそう判断する。
「僚、お前・・・」
海坊主がずいっと身を乗り出した。
「なんだよ・・・」
僚が体を少し後ろに引く。
「ぺこちゃん人形に迫られるのが嫌で、香にプロポーズしたんだって?」
海坊主は一気にそう言うと、たまらんというようにお腹を抱えて笑い出した。
何のことか分からない僚はポカンとしている。
確か、今朝方見た夢はぺこちゃん人形に迫られるものだった。
そう言えば・・・香の声が聞こえたような気がしたが・・・。
とたんに、僚の顔が真っ青になった。
(・・・ひょっとして、俺・・・何か変な事口走ったか・・・?)
追い討ちをかけるように、海坊主が口を開く。
「しかもお前・・・香に抱きついてまでも助けを求めたんだって!?」
その言葉に、僚の口が金魚よろしくパクパクしている。
「んなわけっ・・・・!」
ないとは言い切れない、自分がはがゆい。
おぼろげながら、そんな感触が腕に残ってるような無いような・・・
(香の奴〜!)
僚があらん限りの怒りを込めて内心呟いた。
何も、寝言までバラす事はない。
その頃、喫茶キャッツ・アイに避難していた香は・・・
身の危険を感じたのか、身震いしたそうだ。
言い訳:ユカさんからのお題「寝起き」
香が慌てるシーン入り。いかがでしょう?
しかし、前から疑問に思ってたんだけど、
僚の周りの人達って、他人の不幸が好きだよな・・・
こと、僚が絡むと、その伝達スピードが速い・・・
しかも、たった一言を告げるためだけに、わざわざ
足を運んだり・・・結構暇だよな・・・